気を使ってなるべく高めに投げてあげたのに、その気遣いはかえって彼を混乱させてしまったのだ。
「わわわ」と情け無い声をあげながら、何度も掌の上でトマトはバウンドした。
トマトを落とすわけにもいかないし、むやみに作物を踏み荒らしてもまずい。守村くんは見事にしりもちをつくと、
しばらくそこから動かなくなってしまった。
「ごめーん!」
ぴょんぴょーんと畦を飛び越えて傍に駆け寄ると、守村くんは弱々しく笑った。
「だいじょうぶ?!腰とかお尻とか痛くない?」
真っ白な体操着がすっかり畑の土色に染まっていた。この人、けっこう運動音痴なんだなあ。
自分のせいでしりもちをつかせたくせに、頭の中ではそんなことを思ってしまう。
「ごめんねごめんね!ほんと私って、いつも考え無しで」
はじめて会った時も同じ様な事を言っていたのを思い出す。クラブ見学会で園芸部の活動を見にいった時、
種をまいたばかりだと知らずに花壇の中へ入ってしまった。
咄嗟に守村くんが私の手を強く引っ張ってくれたから、花壇はさほど踏み荒らされることはなかったけど、
私をかばった代償に、彼は目の前にいた先輩に激しくぶつかっていった。
ぶつかられた先輩も咄嗟にどうしていいのかわからずに、守村くんと一緒にしりもちをついて。
結局入部という形で、その場の雰囲気をまるくおさめる事はできたのだけど……。
まあ、そんな感傷と反省は後にまわして、とにかく体についた土を落とさないと。
立ち上がらせようと、守村くんの手を握った時だった。ぶるっと、彼の腕が震えた。
「あ、そ、そんな。ぼ、僕にはお気遣いなく!」
「えっ、だって」
なんでそんな言い方するの?やっぱり怒ってるんじゃないの?
これは身をもって謝らねば。ぐいと力をかけて手をひっぱると、反動で彼は立ち上がった。
「ごめんね、後ろ汚れてるから」
まずは背中にまわって肩についた土を払い落とす。
私と同じ位の身長だけど、肩にふれてみると私とはやっぱり骨格が違うと思った。
一抱えで20Kは越える腐葉土の袋を肩に担げるぐらいだから、本当は随分力持ちなのかもしれない。
「背中のところについた汚れね、今晩のうちにちゃんとお湯につけておくと良いよ。
土の汚れって結構落ちないんだよね。ママがね、いつも言うの。
美奈子の服の汚れを落とすのは本当に大変って」
「あの……小波さん」
「あっ、ここ凄い。ここの部分は、ぱんぱんってしっかり叩いて服の繊維の中に入った土をちゃんと落としてね。
あっ、腕のところは怪我してなかったー。良かった良かったー」
やっぱりこれも「考え無し」だったと言う事に気付かされたのは、彼の前髪に触れた時だった。
「も……守村くん?」
傾きはじめた陽の光が、彼の頬を赤く染めていた。でもそれ以上に、恥かしそうに眼を伏せるその表情を見て、
私はやっと彼の気持ちを知った。
「……ごめん、なさい。べたべた触っちゃって」
守村くんはこくりと頷いた。
「いえ、僕がその……全然免疫が無いと言うか」
「いやいやいや、いきなり手を握っちゃった肩とか触られたら嫌だよね」
「違うんです!」
「へっ?」
急に口調が強くなったので思わず返してしまった。今日はこれにて4度目の「へっ?」だ。
「嫌ではなくてむしろ」
「むしろ?」
「むしろ、その……。嬉しかったと言うか」
うわあ、なにそのピュアっ子発言。
「守村くん……」
いつもいつも失敗ばかりして迷惑をかけているのに、そんな優しい言葉をかけてもらえるなんて。
うわーん。守村くん、君はなんて良い人なんだ。
「どうしたんですか?小波さん」
恥かしいのと嬉しい気持ちが一杯になって、顔中が火照ってくるのがわかる。
「なんでもない!」
思わず怒ったような声になってしまう。守村くんは一瞬驚いたような顔をしたけれど、すぐに分かったようだ。
受け取ったばかりのトマトを服の裾で軽く拭くと、皮なりのままかぶり付く。
「うん……。美味しいです」
守村くんは心から美味しそうな笑みを浮かべた。
※守村くんと美奈子は、とっても仲良しだといいな。
こんにちは、花粉症でこの一週間あまり、夜のなると寝込んでいる状態です。
でも、毎年のことなので気になさらないで下さいね。
最近はついったーを中心に交流を繋げているのですが
時々メールやウェブ拍手で感想をいただけたりすると、本当にありがたいなあと思います。
頂いたメールやメッセージ、ありがたく読ませてもらっています。
「monmon」の方に感想を下さった方、どうも有難うございました。
花粉症がおちついてきましたら、話の続きを書こうと思います。
さてさて、話の続きでもしましょうか。小さなてんとうむしのお話を。
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Ladybird 3
朝方に見た流れ星。夜のおわりを告げるように、鶯色の空をひゅっと、星は斜めにまたいでいった。
流れ星って、きれい。そして、切ない。
星が流れていくのを見たのが始めてだったからかもしれない。誰よりも眠りを貪るのを趣味とする私が、
はじめて眠れなかった夜。人間の、あの人の事を思っていたら眠れなくなってしまったのだ。
あの人とであったのはほんの偶然。とすると、今度会える偶然はきっと無いと思う。
たとえ、同じ様に花の中でじたばたともがいでみせても、あの人は来ない。
一体どうしたら、あの人にもう一度会えるのだろう。私は真剣に悩んだ。
彼とであった場所は森の中でも畑の中でもなかった。
人工的なものが幾つか点在して、私達が心を許して住むには難しい環境だ。
そして私達が必要としている緑や美しい水は不自然な状態で共存していた。
そう、とても不自然な。
同じ種類の花が同じところで幾つも咲いて、同じ背丈で花を咲かせていた。
風が吹けば花はいっせいに同じ方向へうな垂れ、
まわりの木々も花たちに習うようかの様に同じ方向へ梢を鳴らした。
そうだ、あれは確か……。
消えていく流れ星を見た時、頭の中に「公園」と言う言葉が浮かんだ。
緑も花も水も人の手が加わった場所のことを、人間は「公園」と呼ぶらしい。
そこで人間は思い思いに羽を休めるのだ。
私がうっかり選んでしまったアネモネの花は、その公園の中にある花だったと思う。
きっとあの人は、公園に様があってきたのだろう、そして私は、あの人と出会ったのだ。
蒼い眼の中に浮かぶ小さな星。それはとても寂しげに光っていた。
明日、公園に行ったら……また会えるのかしら。
夜露で顔をぬぐうと、私は濡れた瞳のまま、空を見上げた。空は白々と明けていた。
「おい、アンタ」
夜が明けてから暫くした後。昨日の晩御飯の残りを食べていたら、聞き慣れた声がした。
けれど私は、聞こえないふりをした。
「どうしたんだい、念入りに体を磨いちゃってさ。
ははーん。さては、誰か良い相手でも見つけたのかい?」
昨日の晩のうちに、しっかりと夜露で体を磨いたおかげで、
私の体はいつになくきれいに光り輝いていた。
去年の秋、まわりに一日でも早く子孫を残すようにと進められた私は、
言われたとおり「集団婚活」に参加した。
きちんと体を磨いたのは、その時以来だ。
その時は、私は成人したばかりだった。何日もさなぎの姿で眠り続け、気がついたら自分の殻を脱いでいた。
殻を脱いだ瞬間、私は生まれ変わっていた。私の体型はそれまでとは別人なほど丸くなっていた。
つやつやの背中には黒い紋。空に浮かぶ星の様に、幾つも背中で輝いている。
私の背中の紋に惹かれて、同じ仲間の男達は束になって私に求婚した。
優しい言葉をかけてくれるものもいれば、強引に私と契りを結ぼうとするものもいた。
けれど、頑固として私はまわり拒んだ。急に、嫌気がさしたのだ。
子孫を残さなければ、卵を産まなければ、立派に成長したとは言えない。
何度もそういわれたけれど、私は聞こえないふりをした。
望まない繁殖なんて、絶対にしたくなかったのだ。
「なんで何も答えないのさ!昨日から本当にアンタはどうかしてるよ。
もしも、また昨日と同じところへ行こうとしたら……あたしゃ承知しないよ!」
鱗粉をあたりに巻き散らかしながら、おばさんは私に食って掛かった。
関係ないよ、おばさんには。だんまりを決め込むと、私は蓬の葉っぱでくるまれた部屋を出た。
「アンタ!どこに行っちゃうのさ!ちょっと……!!
人間に自分から会いにいくなんて、どうかしてるよ!!」
部屋には何も残さなかった。
ひょっとしたら、もうここには帰ってこれないかもしれない。
のんきにおばさんの嫌味を聞くこともできないだろう。
そう思うと、私の背中に向かって怒りをぶちまけるおばさんの声がとても愛しく感じる。
さよなら、モンシロのおばさん。そしてありがとう。みなしごの私を、今まで可愛がってくれて。
私はこっそりと、涙を拭いた。
そして少しも進まないうちに、私は羽を広げた。
いつも飛び方がへたくそだと周りの連中に野次られるけど、今日はいちいち気にしていられない。
「アンタ!」
すぐそばで、おばさんの羽音が聞こえる。けれど振り返ることなく、私は飛び続ける。
ふらふら、ふらふらと。アネモネの花が幾つも揺れる、あの場所へ。
神様お願いします。もう一度、あの人に合わせてください……!!
羽を精一杯に広げると、私は必死になって飛び続けた。
お日様の光が、じりじりと私の背中を焼き始めた。
勤務して以来、はじめて春休みをしっかり頂きました。
それも6日間。
休む前、帰り支度を整えていると「休みはどこか行かれるんですか?」と上司に聞かれましたが
自分は笑って「どこにもいかないですよ!」と答えました。
ほんと、そのとおり。
ほとんど部屋の中。
日曜日に、この数ヶ月忙しさにかまけていけなかった墓参りをしたぐらい。
あとは家でお茶を飲んで、話を書いて、書いては消して、ゲーム(コルダ)をやっての繰り返し。
昨日の嵐が吹き荒れる前、とても暖かい日が続きました。
部屋の中にいるより、外の方が温かい。
家人の分と一緒に作った弁当をベランダに持ち込んでお昼をとりました。
そんな春休みを過ごしておりました。
今日から仕事始め。新年度開始にむけて会議やら、新学期の準備でおおわらわ。
8時過ぎの帰宅となりました。
皆さんと同様、また忙しい日に戻りますけど、ちょこちょこと創作を続けていきたいと思います。
この前から続けている話と、絵チャの記録はまた今度。
今日はひとつ、違う話を。
カルタ企画で、自分は「せ」の読み札を作ったのですが、
先日ワタナベさんが素敵な絵札をつけて下さいました。
ワタナベさんの素敵な絵を見ながら、ちょっと話を書いておりました。
さわりだけですが、また気が向いたら読んでみてください。
先生のソナチネ1
-----まったく。おまえさんはやる事が危なすぎる。どうして人間なんかに興味を持つんだろうねえ……。
-----だって、あの人。悪そうに見えなかったんだもん。
----なんだい、「あの人」って。ああ、やだやだ。
人間にそんな敬称をつけるなんて、おまえさんどうかしてる。
----優しかったのよ。あたしをぎゅっと潰そうなんてしなかった。あたしの命を救ってくれたんだもの。
----単なる気まぐれだよ。あいつらのやることなんて、いつも気分次第だ。
とにかくあいつらは物欲の塊だからね。気になったものは、まずは捕らえてみる。
捕らえ方も酷いもんだ。あの「手」とか言う大きなものを使ってぎゅーっとつかむ奴もいれば、
「網」とか言う道具で捕らえる奴もいる。
あたしなんて、あいつらにさんざん追い掛け回されたせいで、このとおり羽がボロボロさ。
----だけど、あの人……。本当に優しかったよ。
----好い加減にしな。人間に心を許した虫はあっという間に命を落とすってことになるんだ。
今度この話をしたら、ただじゃおかないよ!
いつもは世話好きなおばちゃんとして慕っていたけれど、今日のおばちゃんは、いちいち私の心にひっかかった。
分かってる。おばちゃんの言っている事はもっともだと思う。
たくさんいた私の兄弟たちも、ほとんどは人間の子どもとやらに連れて行かれてしまった。
勝気な上の兄さんは、子どもの手をめがけて強烈な汁をかけてやったら、
その瞬間に空中へ弾き飛ばされてしまった。
命は取り留めたものの、あれ以来兄さんは蓬(よもぎ)の葉っぱにくるまって、
ずっとずっと、殻に閉じこもっている。
だけど……。
----あの人、本当に優しかったんだもの。
私は心の中でもう一度呟いた。確かに、凄く怖かった。本当に怖かった。
恐る恐る目をあけてみたら、すぐ近くに人間の顔があって、思わず漏らしそうになった。
外敵に対する最大の防御として、私達は黄色い体液を分泌する。
その効果は絶大で、空中から攻撃してくる鳥や鋭い刃を持つ蟷螂(かまきり)達からも敬遠されている。
だけど、兄さんみたいにはなりたくない。
気を失いそうになるのを必死にこらえると、私はじっとその視線に耐えた。
不思議な感じだった。顔の中心に蒼い水晶のような光。あれが人間の眼なのだとわかった。
造りは私達のとまったく違うものなのに、どうしてか、嫌悪できない。
あの蒼い色が攻撃的に見えなかったからかもしれない。
あの眼に見つめられると、とても優しい気持ちになるのだ。
そして、人間の手は、とてもやわらかかった。
いつもねぐらにしているアブラナの花より、もっとふかふかで温かい。
もしかすると、囚われてしまうことだって十分ありうるのに、私は何も動かなかった。
どれぐらい時が経ったのだろう。
ふっと小さな声が聞こえた。
------きれいな色ですね。
はっと、私の心が大きく揺れた。それは今まで聞いたことの無い様な優しい声。
きれいな色ですねって、一体何に向かって話しかけているのだろう。
ざわざわと乱される、この心地。それはとても気持ちが良かった。
もっと知りたい。自分の命を守るより、好奇心の方がついに勝ってしまった。
とじきっていたからだをのばして、私はもぞもぞと動き始める。
------あっ、動きました。
その瞬間、ため息と共にその言葉が聞こえてきた。そうだ。この人間は、私に興味を持っている。
大丈夫。きっと、この人間は私に危害を与えないはず。自分の直感を信じて、私は思いのままに動いた。
モンシロのおばさんの様に見せれるような羽は無い。
近場を移動する為に広げる羽は、どの虫達よりも地味なもの。
何の取り柄も見栄えもしない私に、この人は「きれいな色」と言ってくれた。
見せたい。もっと、私を見て欲しい。
こんな感情が自分にあったのを始めて知った。蒼い眼の人は、その後も暫く私を眺めてくれた。
きっと喜んでくれたのだろう。時折、あの蒼い眼がまぶしそうにとじることがある。
そして、その後は必ず私の体に触れてくる。
少しも嫌な気持ちになれなかった……。
---ったく、おばさんったら。散らかすだけ、散らかして……。
我に返ると、私はねぐらのまわりの片付けを始めた。アカシアの蜜にアブラナの油脂。
モンシロのおばさんと違って、私の主食は本来肉食だ。けれど、なぜか今日は何も喉が通らなかった。
いつもなら物足りなく思うアカシアの蜜が、今日はとても心に染みた。
もしかしたらこれを機に、私も菜食主義に変わってしまうかもしれない。
----また、会えるのかしら。
明日になったら、またあの場所へ行ってみたい。今度はもっと、あの人と関わってみたい。
クローバーの葉っぱで床を拭いていると、ふと光るものを見つけた。砂よりも細かく、さらさらとしている。
おばさんの麟粉(りんぷん)だ。
私の言動に憤慨した時に落としたものなのだろう。
葉の隙間に入り込んだ月の光に照らされて、それはきらきらと妖しく光った。
----きれい。
思わず手にとると、私は自分の体に撫で付けてみた。
どうかしら。
少しはきれいに見えるのかしら。
私はあの人の事を想った。
つづく。
昨日のお話の続きです。「えっ?こんな話読んでくれてるんだー」とめちゃめちゃ驚いております。
虫ですよ。虫ネタでGS書いちゃうなんて、どうなってんだと思いますが、
もたこさんのテントウムシちゃんがあたいの心を突き動かしてくれます。
がちゃさんの凄く素敵なあの絵の部分は、この話の続きで使わせていただこうと思います。
ちなみにちーちゃんは、虫に対しても敬語を使うと思います。
それも片言で。ひーー、片言萌えなんですよー。
ついったー、拍手などで熱いメッセージと感想ありがとうございます。
もう少し、この話を続けさせてくださいませ。
そして、絵チャの思い出。
茅さんが一度落ちまして、その後入り直してこられたのですが、「桜井 茅」と名をあたらめられて。
そこから先は来られる人みんな、まるでしきたりに乗るような、これが礼儀だといわんばかりに
とんでもない名前で来て下さいました。
今回、うっかり文字ログをとるのを忘れてしまったので、
参加者全員のあらぶる名前を思い出せないでいて
ちょっと苦しんでいるのですが、
一番すごかったのか「プリストファー・ウェザー・フィールド」と名乗ってきたプリさん。
普段「プリさん」と簡略して呼んでいるのに、いきなりその名前で来たので、会場皆で爆笑。
おまけに文字多すぎて、チャットの名前欄に全部おさまりきれないし。
そんなプリさん。その名前を拝借したからには敬意を込めてと、素敵なくーちゃんを描いて下さいました。
ええなあ。
桜じゃー。
プリさん、絵チャ来て下さるとほんと面白いのよねえ。
オマエは随分潜るのが上手くなったねえ。
この前、モンシロのおばちゃんが、そう誉めてくれた。
良かった、良かった。なにもかもが黄色く染められていく4月、私の周りには沢山の花が一斉に咲き始めた。
それまで堅くすぼめていた花びらを、この時とばかり広げていく。
ある花は匂いをまきちらし、ある花はたっぷりと花粉を蓄えて。
花たちは何も語ってくれないけれど、私はあの子達の気持ちが良く分かる。
お前達虫共よ、どうか私の願いを聞いておくれ。私のかげがえのない、この命の欠片。
どうぞ、次の春も咲かせておくれ。
住む土地は選べない。お前にまかせるから、私をどこかで咲かせておくれ。
そんなふうに、花たちが訴えているような気がするのだ。
(益田もたこんぶ様 画)
ちなみに、花の中にもぐるのが一番上手いのはミツバチの方々。
羽を最大に震わせながら、幾つもの花の中に飛び込んでいく。
時には花の蜜に酔わされて、そこで命を落としてしまうものもいると聞いている。勇敢だ。
私の場合、ミツバチや蝶のようには上手くいかず、きまって花の中で暫くうずくまっている。
なにせ体が丸いのだから仕方がない。飛ぶこともできるのだけど、あまり長い事飛んでもいられない。
けれど、このつやつやの背中にびっしりと着いた花粉を、私達は時間をかけて目当ての花に届けていく。
私だって、少しは役に立ちたいのだ。
色々と忙しいこの季節。今日も私は朝から幾つもの花の中にお邪魔していた。
アネモネは茎のところに小さな歯がついているから、花のところまではとても登りやすかった。
わーい、らーくちーん!
そう、油断したのがいけなかった。
花の中にもぐりこんで暫くした後、私はそこから出ることができなくなってしまったのだ。
アネモネの花びらは思ったよりも大きく、そして複雑だ。
パニックになった私は暫くそこでがむしゃらに手足を動かした。
だけどもがけばもがくほど、幾重もの花びらが私の体に巻きついてくる。
そうこうしているうちに、とうとう私の体は仰向けにひっくり返ってしまった。
ひっくり返ったが最後。
滅多なことには体勢を立て直すことができないのだ。
---うーん!
---ふーん!
私は心の中で何度も声をあげた。どうしよう。
私はこのまま、この花びらに囚われたまま命を落としてしまうのかしら。
まだ恋もした事が無いのに。卵も産んだことがないのに。目の周りが黄色に染まったまま、私は……。
そう、絶望した瞬間だった。花びらの外から、聞き慣れない音が聞こえてきた。
あたりの草をかきわけ、ゆっくりと地面を踏みしめる音。近付くたびに花が大きく揺れる。
-----ひょっとして、これが……に、ん、げ、ん?
ゆらゆらと揺れに体をまかせて、私はぼんやりと思った。
私達よりずっと大きな生き物。人間という生き物が、一番大きいことを
何となく知っていた。飛ぶことはできないけれど、奴らはとにかく力が強い。
そして時には私たちに強い関心を寄せ、無理やり生け捕ろうとするらしい。
生きたまま捕るならまだしも、中には残酷に潰してしまうのもいるとか。
----人間に捕まっちゃうのかな。
どうなんだろう。つかまったら、ぎゅっと潰されるのかな。
ここに閉じ込められているのも、つかまるのも変わらないよね。
あーあ、せめて最後に、お日様の下でびゅーんと気持ちよく飛んでみたかった。飛んで……。
その時、目の前の景色が急に暗くなった。ふわっと風が私の頬に当る。急速に、何かが私に近付こうとしている。
赤紫の花びらが大きく揺れた。そして見たことも無い大きなものが私の体に触れた。
----潰される…!!
きっとこれに私の体は押しつぶされてしまうのだ。
咄嗟に、私は体を硬くした。少しでもチャンスがあったら、飛んでみたい。だから私は…・・・死にたくない!
----嫌!!
そう心の中で叫んだ時だった。
「大丈夫……ですか?」
やわらかな。
やわらかな声が私の心に響いてくる。思わず私は、声の主を探した。
きっと、私に触れてくるこの大きいものの、その声の一部だと思う。
堅くすぼめた足をゆっくりと伸ばしながら、相手の出方を待ってみる。
「ひっくり返っちゃって……可哀想に」
大きいものは、そっと力を加えるとすぐに私の体を戻してくれた。
それもそれまで囚われていた花びらはどこにも見当たらない。
どうしちゃったんだろう……。
恐る恐る、私は周りを観察した。
さて、今日はこれまで。
絵チャって素敵ですね。素敵な絵のお陰で、話が浮かぶから。
がちゃさんが描いて下さった、「テントウムシとちーちゃん(千晴)」から
ちょっとした小話を書かせてもらっています。
そして真ん中にある、もたこさんのテントウムシさんが
あまりにも可愛らしいことも書きたくなった理由のひとつ。
絵チャの話と、この話の続きはまた明日。
絵チャに来てくださった皆様、どうもありがとうございました。
あちきは、ヒノキでもスギでもありません。
稲です
この時期、田植えがはじまる前のしろかきをした状態の田んぼ畑で
ムツゴロウのごとく泥の中で一日を過ごしております。
お勉強をおしえるより、タニシを取ったり、桑の実をみつけてジャムにするのを子ども達におしえるのが好きなのでかれこれ18年ほどこんな仕事を続けておりますが
もうイネ科はきつい。
まだ、インフルエンザに罹ったほうが良い。
本当に申し訳ないが、今日はこれにて終了。
益田祭りは明日からがんばるぞ!
ウェブ拍手メッセージ、ありがとうございます。
おいら、元気だから、でも。今日は……。
では!
ぽかぽかの陽気が続いたかと思うとぐっと一日中冷え込んだりと、
なかなか冬物がしまえない感じです。
でも、ちょっと無理してでも、薄着にしてます。
学生の時、友達相手に新聞とかフリーペーパーを作って、あげたりしていました。
久しぶりに作ってみました。その名も「へんたい新聞」。
6ページあります。ものすごくつまんない内容ばかり。
今朝、知人殿へ郵便で送ってみました。何にも予告もしていないから、びっくりするだろうなあ。
二ヶ月に一回ほど作ってみようかな、と、思います。今度は5月の終わりぐらいかな。
そういえば、今年の年賀状は全て宛先などを毛筆で書いてみました。久しぶりに筆で書いたけれど
これが、なかなか楽しい。
アナログな事も結構面白いものです。
話がびゅーんと飛びますが、ジョージさん主催の、したら先輩企画
終了されました。
面白かった!ジョージさんをはじめ、参加された方々、みんな素敵な作品でした。
どの先輩も、なんだか不器用で、おかしくで、愛しい。
ジョージさん、素敵な企画をこさえてくださって本当にありがとうございました。
そして、またまた、話はびゅーんと、飛びます。
先週の休みの日、久しぶりにビデオを見ました。20年前…もっと前だったのかな。
名古屋の駅裏にある小さな映画館へ、イカぽんと一緒に観に行きました。
映画を見たあとに入った「ヒマラヤのケーキ」で、たまごのサンドイッチとフルーツサンドイッチを食べたのを覚えているよ。
映画のタイトルは「マルセルの夏」
南フランス、プロヴァンス地方を舞台にした、少年の夏休みの物語。
主人公のマルセル少年と家族の、あたたかい雰囲気がとっても良いんだ。
1900年はじまりの頃の、家具とか食器とか照明とか、洋服とか。とにかく雰囲気が良いんだよ。
この映画は、凄く良いですよ!続編の「マルセルのお城」もオススメですよ。
カオポンは元気でやっております。
美味しいお酒をちびちびやりながら、気がつくと寝ております
カオポンの仕事には「卒業式」という取り組みがこの時期にあるので
毎年いろんな想いを抱えながら過ごしております
切ないけれど、送り出す幸せも感じます。
そうそう。
カオポンのサイトね
明後日で三歳を迎えるの。
みなさんのお陰で楽しく続けさせてもらっています。
本当にありがとう。
こどもはね、三歳の頃が一番言葉を沢山覚えるのね。
カオポンも、もっともっと読んでくれた人の心に残るような言葉を綴れるようになりたいな。
まだまだ未熟な部分がいっぱいあるけれど、自分なりに頑張ってみようと思うのよ。
みなさん、これからもよろしくね。
ウェブ拍手、毎日ありがとうございます。
素敵なコメントを残してくださってありがとうございます。
仕事に疲れすぎて心が乾いてしまいそうな時、頂いたコメントを読み返しては元気をもらっています。
おひとりおひとりにお返事をさしあげたいのですが、
あともう少しお待ちくださいませ。
はあああ。
尽とタイラーと益田さんと零一さんと千晴くんと総一郎さんと大迫せんせいと、最後に斉藤くんも一緒に
お花見がしたい。
そんな夢を見たいな。
ではではw
PS…monmonの方でお話を1つ。電車にのって玉緒さんは……。
早いものでもう2月。
1月31日から2月3日まで、カオポンの所は毎日節分祭り。
鬼が一日1クラス限定でこどもを脅しに来るんですな。
月曜日も名古屋は朝から小雪が舞い、豆まきは外で行いました。
今年は特に寒いですねえ。
でも、この節分がすぎれば次の日は立春です。もう春なんですね。
この寒さにかまけて色々更新が途絶えておりましたが、
今日は久しぶりに話を1つ。
去年の暮れから書き始めた「ジングル」の続きです。
斉藤さんがちょっと哀れですが、きっとここから斉藤さんに春が来ると思いますので
続きにもお付き合いくださると嬉しいです。
あと、ジョージさん主催のしたら先輩祭り、いよいよ今日から始まりました。
わあー。
これこそ、春です。
先に内覧会というしゃれたおもてなしを頂きまして
見てまいりました。
あたしゃ、今住んでいるマンションが建てられる前の内覧会に行っておりません。
なので内覧会と言う言葉の響きで、まずはきゅーーーんときました。
もうすごいですよ。
読んだあと、見た後に必ずきゅーんとなったり、じんわりとなったりします。
すてきな、すてきな作品が勢ぞろいです。
期間ごとにだったかな、少しずつ色々な作品が見れます。
だから何度でも足を運びたくなる。
かっぱえびせんみたいな祭りです。
心も体も冷え気味な方は、是非、お祭り会場まで足を運んでみてください。
カフェ番長の方、二ヶ月ぶりに更新です。
1月の暮らしをまとめてみました。
よかったらこっちの方も覗いてやってください。
あとはウェブ拍手色々とありがとうございました。
スコ様、LOVE!!
いきなりの告白でごめんなさい。(笑)
癒されましたw
カオポンは咳がなかなか止みません。明日、病院に行ってきます。
もう咳がでるようになってから3回も病院に行っているんだけど、
止まらないんだなあ。
咳以外は元気ですからね!
皆さんもお体、大切にね!