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 「今日もさむいなあ」
と、隣にいた友達は手をこすりあわせながら、僕の方を見て笑った。
僕も、「そうだねえ」と頷く。今日は本当に寒い。僕が今まで感じた中で、一番寒い夜だ。

「お星さん、きれいやなあ」
「うん・・・」
「ほら、あの星・・・。ピカーって。手え伸ばしたら、届きそうな感じや」
「うん・・・」
見上げた夜空に、僕達の白い息がいくつもいくつも浮かんでは消えていく。
吐息の向こうには、シリウスが青白く瞬いている。冬の星座って、どうしてこんなにきらきらと輝いているんだろう。
「なあ・・・。寒いの、大丈夫?」
僕がずっと黙っているのを気にしているのだろう。僕は慌てて大丈夫と笑ってみせた。
「ほら!智也くんに貰ったのがあるから」
肩にかけたかばんをどさっと地面に落とすと、急いで鞄の中をまさぐる。
この寒さでかばんの中は冷蔵庫の中みたいに冷えていた。
教科書とペンケースの間に挟まれていた手袋を引っ張り出すと、勢いをつけて手袋をはめようとする。
だけど指先がかじかんでしまって、なかなか思ったところに指がおさまらない。
去年の春まで南の島にいた僕は、冬の寒さも手袋をはめる事も、生まれてはじめての体験だ。
「ほらほら、慌てない」
友達は軽くため息をつくと、僕と向き合った。
「ほら、こっちの方にお母さん指を通して・・・こっちはお姉さん指や」

おっとりと優しい顔をして、友達は僕の心を暖めてくれた。








fin





智さんとこの「宮瀬智也」くんと、カオルの話。
今週は物凄くさむかったですね。雪雲が去った夜の空は、今にも零れ落ちそうな程、星がきれいに光っていました。
星を眺めるのが好きな智也くんと、冬の寒さを初めて体験するカオル。
ちなみに、自分が幼い頃に住んでいた南の島には、冬と言う季節がなかったです。
どれだけ寒くても、薄手のブラウス。五年に一度、見栄をはってストーブをつけたぐらい。
はじめてここの寒さを知った時、あまりの寒さに涙がでたのを覚えてます。
タートルのセーターも、手袋も、ニットキャップも、全て初めて。




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久しぶりに晴れた日曜日。僕は窓を開けると、外からの光を手元に開いた白い紙の上に集めていた。
部屋の電気をつければ十分まわりは明るくなるのに、僕の心は蛍光灯の光より、やわらかな朝の光を求めていた。
開いた白い紙には、小さな文字が縦書きにつづられている。久しぶりに見る、母の書いた字だ。

----(みのる)、お元気ですか。外はまだ、雪が深く降り積もっております。

最初の一文を読んだ瞬間、僕の心の中にふるさとの景色が浮かび上がる。
古い茅葺屋根の家、土間を上がってすぐの囲炉裏端。
かけられた鉄瓶の口からは湯気が立ち、冷え切った空気をそこだけほんのりと暖めている。
母はそこにちょこんと座って、編み棒を動かしている…。

「まだ、雪は積もったまんまかなあ」
思わず、独り言が出る。
茅葺屋根に何層も積もった雪。今年は誰が雪かきを手伝ってくれたのだろう。
本当は僕も手伝うはずだったのだけど、急に仕事が入って、戻ることができなくなった。
赴任地は日本を遠く離れた、赤道直下にある小さな南の島。一年中原色に囲まれた島の中で、僕は三日前まで蝶を追っていた。
学生の時の恩師に付いて、蝶の研究に明け暮れていたのだ。

久しぶりに日本に戻ったのは、研究に区切りがついたのではなく、また別のところから仕事の依頼が来た為だ。
今度は南の島ではなく、僕の家から自転車で30分くらい走ったところにある私学高校。
中高一貫の進学校として地元では有名な所だ。
新学期から非常勤講師として、そこへ赴くわけだ。
一応教員の資格はもっているけど、それを活かすのは今回が初めて。正直、生徒の前でちゃんと授業をやっていけるか、かなり不安だ。


帰国する前に、母には電話を入れた。新しい職のことも少し触れておいたが、母は凄く喜んでいた。
いつも日本から遠く離れた所にいるので、今度は安心なのだろう。手紙にもそのような事が綴られていた。

-----もうすぐ学校が始まりますけど、まだ寒いでしょう。寒いときには首に何か巻いて喉を守りなさい。
はすぐに咳をこじらせるので、母は心配です。どうぞ体だけは大事にしてください。


手紙はそこで終わっていた。「かしこ」の代わりに、鉛筆で薄く雪だるまの絵が描かれていた。ふるさとはまだ、春が遠いらしい。
読み終えた手紙を折りたたむと、僕はズボンのポケットにしまった。








・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
こんにちはです。
おや?カオポン、何か話を書き始めたみたいだけど、何の話だ?

あ、二次創作じゃなくて、オリジナルです。
サネトモ先生の話です。
ここは二次創作サイトなのに、オリジナルをもちこむのはちょっと気が引けますので
もう少しまとまった形になったら、
以前やっていたオリジナル小説のサイトにUPします。

気が向いたら、どうぞ。

ここでは、あくまでもゲームの中のキャラクターを愛でるサイトの方が
見にきてくれた人には良いのかなあと。


ちなみに、「サネトモ先生について詳しい設定があったら教えてください」と色々
問い合わせを頂きましたので、ちょっと書いておきます。


サネトモ先生の本名は、実本 穣。さねもとみのると言います。
出身は、岐阜県。何で岐阜県なのかと言うと、これは後々の話に係っています。

趣味は昆虫採集。特に蝶の生態を研究するために国内外を問わず、蝶を探しに行きます。
尊敬する人は、アンリ・ファーブル。
愛読書はもちろん、ファーブル昆虫記全巻と、ヘッセの「車輪の下」。

せいたかのっぽで、頭はもしゃもしゃ。目の色は少し色素の薄い鳶色。
ちゃんと手をかければ、それなりに良い男なのに、
まったく自分をかまわない。
好きな食べ物はご飯とアジのひらき。酒はあまり飲めない。
酔うとすぐに歌を歌いだすが、それが極めて音痴らしい。

のんきでおだやか。恋の話は皆無に等しく。
年齢は不詳。大学を出たり入ったり、入り浸ったりしていたために
人よりかなり遅めの社会デビュー。

6畳一間の安アパートに、現在一人暮らしを楽しんでおります。





・・・と、こんな感じです。話がすすむうちに、もっともっとサネトモ先生の人間臭さがかけれるといいなあと思います。


こちらの日記にサネトモ先生の話を書くのは、今回限り。
次回からは、GSのキャラで話を進めていこうと思います。

ではでは~








「となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ
となりのきゃくはよくかきくうきゃくだ
となりのきゃくはよくきゃきくう…あーーーっ!」

「はーい、ざーんねーん。もーう一回やりなおしー」

「ええーー?もう一回?」

「うん!ちゃんと言えないと教えてあげない」

「ええー」

「ええーじゃないよ。言ったよね、お姉ちゃんが知りたいこと。
教えて欲しかったら早口言葉10回言うって」

「はあ…最近の小学生は手ごわいな」

「うん?何か言った?」

「ううん。何にも。さっ、しきりなおしするか」



日曜日の昼さがり、二時をまわったあたりから、私はよく隣の家の子と話をするようになった。
二年前に越してきた家は、建ぺい率ほぼ100パーセントの中古二階建て。
少し前に山を切り崩して作られた集合住宅地。
猫一匹もくぐり抜けることができないほどの僅かな隙間を作って、隣には似たような造りの家が一軒。
越して来てすぐに家族総出で隣の家に挨拶をした時、玄関口に「その子」がいた。
親の後ろから私達の様子を物珍しげに見ていた彼は、私と目があうと、はにかむような笑顔を見せた。

「今度4年になったばかりで…色々スポーツをやらせてるんですけど、背があまり伸びなくてね。
もういっつも漫画がゲームばっかりやっている子で。ほら、遊、ちゃんと挨拶なさい」

前に押し出されたその子は、親に向かって唇を尖らせた。
たぶん、背が低い事等「くだらない」情報を勝手に流したからだと思う。
「やだよ」とむくれる頬が、ほんのり赤く染まっていてた。何だか可愛いなと思った。

それから少しもしないうちに、彼は私の家に遊びにくるようになった。
窓ガラス越しに、私と彼の部屋が隣り合わせになっている事を知って、大胆にも窓から侵入してきた。
ちょっとした冒険心だったと思う。
両方の家に聞こえるぐらいのはしゃぎっぷりで、彼は私の部屋の窓枠に手をかけた。
ほんの数十センチの距離なのに、何だか落ちてしまいそうな気がして、
思わず手を差し伸べると、ぎゅっと彼は握ってきた。
その時、ほんの一瞬だけど、彼のことを異性だと意識した。
私よりずっと年下の子供なのに、そう思った。





「遊くん、ちょっと休憩しよ。何か飲み物でもいる?」
さっきからの早口言葉で喉が渇いた。下に行って飲みかけのサイダーでも持ってこようかと思って
彼の返事を聞いてみる。読んでいた漫画から視線をずらすと、彼は「いいよ」と笑った。
「いいよって?」
「あっ、俺。自分の部屋戻って取ってくるから」
すくっと立ち上がって窓辺の方へ向かっていく。
「え、なんで?遠慮することないよ」
いつもコーラーある?って聞くじゃない。ひょっとして家の人に何か言われたの?

ちょっと食べ物に煩い彼の母は、チョコやコーラーと言った、子供が究極に欲しがるようなものを与えていなかった。
だからその「毒の味」を知ったのは、全部この部屋だった。
そんな家庭の事情を知らなかった私は、普通に彼に提供していた。
私との他愛も無い話に、長い時間かけて付き合ってくれたお礼の品は数知らず。
ポテトチップスにマシュマロ、生クリームいっぱいのケーキにりんごのタルト。
彼が帰った後は、暫く部屋の窓をあけておかないといけいない程、私達は甘いものを貪った。
少ししてから、家では食べさせてもらっていない事を知って、私は酷く後悔した。
だけど彼は、私の部屋に来るたびに、無邪気にそれを欲しがった。
「お姉ちゃんといる時じゃないと」
そう言って、子犬のように甘えた目で強請られると、その通りにするしかなかった。

人懐っこくて、子供らしいところもあれば、時々驚くほど冷めている表情を見せる時もある。
もしも彼が、血の通っている兄弟や遠い親戚の関係だったら、
たぶん私は、それほど彼との交流が続かなかったと思う。
甘く毒々しい香りの中で過ごす彼とのひと時は、それまで退屈に過ごしてきた週末とは、少し違った。



「何これ」
窓越しに、小ぶりの缶とペットボトルの入った水、そして牛乳を私に預けると、
彼は「よいしょ」と窓枠に手をかけた。
「何だと思う?」
「…わかんない」
向かい合って、先に視線を反らしたのは私だった。
見慣れていた窓枠が急に小さく見えたのは、彼の背が急に高くなっている事に気づいたから。
この春で6年生になるのだから体が成長して当然。なのに、今まで何も気づかなかった。
腰をひねって半身を私の窓枠に乗り入れると、彼はそこで止まった。
「どうしたの遊くん」
「うん?うん…」
振り返って自分の部屋を見る。そして私の視線とぶつかると、彼は「ふっ」と笑った。
「なんかさ。最近、ここ、ミシミシ言うんだよね」
無事に私の部屋に入ると、彼は窓の桟を指した。
「何度もここを跨いでいると、やっぱりがたついてくるのかな」
安い素材を使っているのか、確かに窓の桟は少し歪んでいた。
「今度お父さんに見てもらうよ!」
「ありがとう、お姉ちゃん。でも…」
「何?」
「いつまでかな。こうやって来れるの」

私に聞こえるほどの小さな呟きだった。
窓越しに伝う客人は、いつしか私の背を越し、もうここから無邪気な顔で来ることはなくなる。
そんな日が、いつか来るのだと思う。
胸の奥がきゅっと沁みた。


部屋の真ん中に落ち着くと、彼は缶の蓋をあけ、中に入っていた匙を使って白い粉を計りはじめた。
その粉をグラスに何杯か入れると、次に牛乳を足した。
「ねっ、遊くん。何それ」
隣に座って、彼の顔を覗き見る。
何を調合しているか分からないけど、どうみても美味しそうには見えない。
「美味しい?」
「あんまり」
少し不機嫌そうな表情で彼は答えた。
匙でぐるぐるとかき混ぜると、まるで覚悟を決めるかのように深呼吸をする。
そして目を瞑ると、一気にその液体を飲み始めた。

ごくごくと喉を鳴らして飲み干すと、彼は「うええ」と呻く。
そして涙目の顔で私を見た。
「まずーーい」
「だから何?それ」
何でまずいものをわざわざ飲まなくちゃいけないのよ。
苛ついた私は、手元にあった缶に貼られたラベルを調べた。
「ぷろ…て…いん?」
プロテインって、確か…。
「筋肉増強剤」
威張った口調の彼に、思わず私は吹き出した。
「そんなのまだ早いよ!まずはごはんをちゃんと食べて、しっかり運動して、よく寝れば普通に背が伸びるし、筋肉だってちゃんとつくよ」
「母さんと同じこと言ってる」
「だってそうだもん。薬に頼っちゃ駄目だって!」
「学校の男子、みんなそれ飲んでるよ。
サッカー部のキャプテンも、これ半年飲んですげえ筋肉ついたって言うし」
「みんな飲んでるからって、危ないよ。それに遊くん、まだ…」
軽く説教を続けようと思ったのに、私はそこで止まってしまった。まだ子供だとは言えなかった。
言ってしまったら、彼の心を酷く傷つけてしまいそうな気がした。

「私は、今の遊くんが好きだよ」
ねっ。だからそんなに背伸びしないで。
持っていたサイダーの栓をあけると、私は一口飲んだ。そして残ったサイダーの瓶を彼に渡した。

「わかった。お姉ちゃんの言うとおりにする」
ぷっと膨らませた鼻の脇に、小さなにきびが一つ。
ふてくされた表情で、彼はサイダーの瓶に口をつける。
何かほっとした様な気持ちになって、私は早口言葉の続きを始めた。



FIN






遊く~ん。もうすぐ誕生日だね!
遊くんは、一年目の四月の時に、「もっと話をきく」にすると、遠足でとれたワラビやつくしやヨモギの話をしてくれるね。
可愛いなあ。遊くん。

遊くんと主人公ちゃん。年の差カップルとして
まだカップルにはなっていないけれど)、またこの話の続きを書きたいなあと思います。

あと話は変わりますが、カンナさん宅で開催されていた「色さま祭り」は昨日で終わりを迎えられました。
カンナさん、素晴らしい企画を有難うございました。
この企画のお陰でGSの良さを見直すことができました。
ほんとうに有難うございました!
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