こんにちは、お久しぶりです。
連休に入ってますね、みなさんお元気ですか?
カオポンは、ちょっとだけ喉を傷めておりますが、元気でやっております。
喉が痛いのは風邪じゃないです。
カオポンが所属しているジャズバンドが、明日ライブがあるのですが
それに向けて練習をやってまして、
それで少し喉を使い過ぎました。
毎年、この時期に呼んでもらえるようになって今年で4回目。
静岡と長野と愛知の県境にある山奥です。
そこの小さな町で、毎年「アートフェスタ」と言うお祭りがあります。
廃校になった中学校の校舎や体育館を使って、地元や県外に住む作家さんが
展示会やお店を開きます。
体育館では2日に渡って、色んなバンドが出演します。
マンドリンだったり、和太鼓だったり、どこかのがっこうのブラスバンドだったり。
ジャズバンドはカオポンのところだけです。
人口の殆どがお年寄りの方です。
ジャズなんて退屈しちゃうだろうなあと、毎年ひやひやしながら
やってますけど、けっこう楽しんでもらえてます。
今年ははじめてゲストボーカルを迎えます。
カオポンとはひとまわり以上年上の男性で、
シナトラみたいな甘い声の人。英語も堪能な方で
明日は一緒に歌います。
バンドメンバーには相方のイカぽんも参加します。
彼はドラムを担当。
二週間前にアマゾンで新しいシンバルを買いました。
本当は職人さんが手で打ってくれたのが良いに決まってますが
それはべらぼーに高い。
工業製品ですが、ちょっと良いのを買いました。
ちなみにトルコ製。シンバルはトルコ製が多いのです。
ピアノも調律が必要ですね。シンバルも本番までに十分な調整が必要です。
明日は山に向かう道が渋滞するので、夜明けと共に家を出ようと思います。
喉…痛いの治ると良いのだけど。
また戻ってき次第、ライブの思い出等お話したいと思います。
話は変わって益田フェス。
今年も早くから色んな方に応援、参加のお知らせを頂きまして
誠にありがとうございます。
色々我慢すること、耐えること、頑張りたくなくても頑張らないといけないこと、ありますね。
現実から逃避する…って言ってはなんですが、
息抜きしたり、現実を忘れたり、甘い気持ちになったり、夢のような気分を味わえる場所って
とっても必要だと思います。
ジャズバー・カンタループ。
みなさんにとって、憩いの場所になりたいな、と思います。
極上の、大人の遊び場を目指して。
そうなれるよう、管理人として頑張っていきたいと思います。
今年も参加してくださるかた、そして今年から参加してみようかなと思う方。
どうぞ、一緒に楽しんでくださいね。
ちなみに、去年の企画で行った「カンタループのメニューを作ろう」。
今年も行います。
先だって、ぺるっこ様が素敵なメニューをBBSにUPして下さいました。
もう、ほんと凄い。
是非、是非、BBSを御覧になってくださいまし。
カオポンも頑張らずにいられない。
こんなに力強い応援を頂いたのです。
今年も楽しみましょう。
みなさま、よろしくお願いしますね。
作品投稿も楽しみにしております。
長文どんとこい!むしろ求む!がっつり求むである!←向日葵さんへ私信。
カオポンの家は、あまり外でご飯をたべません。
時々、馴染みの店でお蕎麦をたぐったり
ワインをのんだりしてます。ほんと、時々です。
お酒を飲むのが好きなので、外で飲むとなると
どうしてもお金がかかってしまいます。
なので、家で飲むことにします。
この時期は鰹が美味しいです。
シメ鯖は少し旬が過ぎてしまいましたが、これも安くて上手い。
野菜は近所の市場で新鮮なものを。
ロゼワインは1000円以内。
最近は、安くて美味しいワインが沢山出回るようになりました。
家で食べる時は、テーブルクロスや皿や食卓に飾る花などに気を少しだけ配ります。
テレビはできるだけ見ないようにして、時々好きなジャズナンバーをかけます。
外で同じ演出で飲んだら、どれだけかかるかな。
できるだけ安く、でも気持ちは豊かな食事が良いなと思います。
互いに仕事を持っていて、顔をあわせるのは一日のうち、僅かな時間です。
だから、食べる時間だけは大切にしたいと思います。
ちなみに、いつもこんなものばっかり食べておりません。
週の5日ぐらいは、ごはんと味噌汁とあと何か一品を作るだけ。
味噌汁の出汁を丁寧にとること、ごはんは美味しく炊くこと、
あとは何かおかずを作るだけ。おかずが納豆でもご馳走です。
一日あたり500円以内ぐらいの予算です。そこでちょっと小銭が浮くと、
すぐに近所の酒屋へ走り、ついでに魚屋で上手い魚を切ってもらう。
こんな食べ方をしております。
食事中はいつもくだらない話ばかりです。
この時期ですと、ぼちぼち益田祭りの話が主になってきます。
この前も二晩続けてじっくりと話しをしました。
自分にも合い方にも色々と思うことを伝え合いました。
今まで皆さんの力に支えてもらっていましたが、
今年も、どうぞよろしくお願いします。
ぼちぼち予告サイトも作ります。
みんなよろしく、お力になってくださいませ。
あと金曜日の絵チャ。実は途中で絵が全部ふっとぶ、
いわゆる「1.5メガの呪い」にまんまとひっかかってしまいました。
ある一定の重さを越えると、自動的に絵が全部消えてしまうのです。
そうなることは知っていましたが、まさか自分ところでこんな事がおきるとは思ってもいなくて。
同席してくださった方々の暖かい励ましと、確実な御指導のお陰で
消えたデーターは何とか修復。
あの時は本当に冷や汗がでました。
こんどはもっとログをまめにとっておこうと思います。
そんなちょっとした事件があったものだから、今回の絵チャはとても心に残りました。
みんなの優しさを肌で感じ取った絵チャでした。
本当にどうもありがとう。
あと、昨日はジンぐるを久しぶりに更新しました。少し描写が足りないので
もうすこし書き加えたいな。
ではでは、今日はこのへんで。
(あ、数日前に拍手メッセージを下さったバンビ様、ありがとうございました。)
「いったいどうしたもんだろうねえ、たーちゃんは。
2年ぶりに会えたって言うのに、さっきからずっと怒ってばかりだよ。
こどもの時のたーちゃんは、そりゃあ優しい子で、おとなしかったなあ。
だれに話しかけられても黙ってニコニコ笑っててな。
たーちゃんは人とお話するより、大根やジャガイモにむかってブツブツと喋ってたな。
ほら、あれ、たーちゃんが二年生の時かね、学校のクラスの子達に苛められて泣いて帰ってきたことが」
「煩せえっ!黙ってやれ!この……」
糞婆あと、最後に付けたかったが、それだけはぐっと口にするのを堪えた。
かわりに目の前に青々と生えた大根の葉をぎゅっと鷲掴みにすると、斉藤は勢い良く土の中から引き抜く。
土の中から出てきた大根は、思ったよりも細長い。
「たーちゃん、大根の首が太いのをみつけて選ぶと良いのよー。
そうしたら、太くで大きいのだからね」
煩せえと罵られたばかりなのに、隣の畦から、また声がする。ああもう!と、斉藤は心の中で唸った。
降りた駅から歩くこと30分。赤黒い土の中から、青々と茂る大根菜。
広大な農地の一画、斉藤は実家の畑にいた。
羽織っていたスーツの上着は荷物車の助手席に預け、シャツの袖をまくって渋々と収穫を手伝う。
どうしても今日明日中に、この大根を全て収穫しなくてはならないのだ。
「悪いねえ、たーちゃん。婆ちゃん、明日の朝にはお迎えが来るからさあ、どうしても全部抜いて欲しいのよ」
だからお願いねえ、と手を合わせて老婆は笑う。
あの世からお迎えに来てもらえるなら願ったり敵ったりだが、そんな気の利いたところでは無い。
向かう所は特別養護老人ホーム。略して「特老」。
斉藤の祖母は、今年の春からそこで暮らしているのだ。
二年前に夫を看取って以来、少しずつ認知症が進んでいる。徘徊や不潔な事はしないが、それまでの記憶は全て曖昧な状態になってしまった。
自分の夫や息子、親戚や嫁の名前は全て忘れた。
ただし、孫の「たーちゃん」こと、斉藤の事は異常な程に覚えている。
生まれた日の時間、身長と体重、下の歯が生えた日のこと、はじめて歩いた時のこと……家族の者が殆ど忘れてしまっているような事でも鮮明に覚えている。
口に出してこそは言わないが、彼女は斉藤家にとって一番の厄介者だ。
ただし、斉藤家の財産の殆どは、全てこの老婆が権利を持っている。
呆けるまでは、相当計算のできる、しっかり者だったらしい。
今でも銀行に預けた7つの通帳の残高を、1円単位で覚えている。
どれだけ呆けても、これだけは。
先祖様から受け継いだこの山と土地だけは、死ぬまでちゃんと、面倒見なくては。
彼女の几帳面な性格だけが、頑なに守られているのだ。
ちなみに斉藤の几帳面さは、祖母から譲り受けたと言ってもおかしくない。
息子をはじめ、親戚一同はみな、祖母の財産をあてにしている。
その為、彼女が気まぐれに畑のことを気にかけた時だけ、家で面倒を見てやっているのだ。
そして今日、斉藤が手伝いに使わされたのもその為である。
明日の朝になれば、白いワゴン車が一台。こちらに寄越してくる。
老婆はそれに乗り込むと、暫く家には戻ってくる事は無い。おそらく、来年の正月までは向こうに行ったきり帰れないだろう。
「たーちゃん。アンタ、もう幾つになった?」
お嫁さんは、まだもらわないの?たーちゃんがお嫁さんもらったら、ばあちゃん、この土地もお山も全部アンタにあげるからさ。孝行しておくれよ。
小さい体を、もっと小さく屈めながら老婆は作業を進める。
「いらねえよ、土地なんてさ」
斉藤はぽつりと答える。
「なんでよ」
「俺、こんなとこで何もする気ないし」
「そうかい?」
「それより金が欲しい。な、婆ちゃん。金くれない?」
小山の様に重なった大根をケースに詰めながら、斉藤は本音を吐く。
この土地売って金にしなよ。そうしたら俺がその金を使って、一儲けしてやるからさ。
一度悪いことを覚えてしまうと、なかなか元には戻れない。
こんな事を考えているのがどれだけ愚かで馬鹿らしい事か、斉藤は自分でも分っている。
だけど、どうしてもそう言わずにはいられない。
「お金ねえ」
作業する手を止めて、老婆は空を見上げる。
「たーちゃんは、お金を使うのが下手だからねえ」
「……ちぇっ」
「たーちゃんが苺を自分の手でいっぱい作ってくれるって言うなら、婆ちゃん考えてあげるけどねえ」
「誰が苺なんざ!」
やい、糞婆あ。まだらボケなんざしてないで、とっととあの世に行っちまえ。
心の中で更に悪態をつきながらも、斉藤は手を休めない。
気がつくと、きれいに葉を揃えられた青首大根が、きっちりと何ケースも収まっている。
我ながら良い仕事をしていると、斉藤は感心する。
「たーちゃん、後でお茶淹れようかね」
老婆は目を細めて笑った。
その頃、部屋の中で1人の少女が瞑想していた。
外はまだ陽が出ていて十分明るいのだが、遮光カーテンで遮った8畳程の洋室は、夜の様に暗い。
机の上には蒼いシルクサテン地で作られた小さなクッションが置かれ、
その上には公式野球ボール程の水晶玉。
年頃の少女が持つには違和感を感じるようなアイテムだが、少女は両手でその玉を包み込むと、更に瞑想を深めていく。
「神秘なるこの力、どうぞ私に見せて下さい。この私の心の曇りを晴らしてください……」
やがて行き着く所まで辿り着いたのだろう。
少女の細い体が、静かに震えた。
FIN
久しぶりにジンぐる更新。この続きから、ミヨ視点になります。
昨日の夜の9時半から朝の2時まで絵チャをやっておりました。
これといった予告もしなかったのですが、
日頃親しくさせてもらっている方からお久しぶりな方まで8人のお客様が
足を運んで下さいました。
絵チャをやるのは凄く久しぶりだったのですが
物凄く穏やかな雰囲気で和めました。
いちおう「夜桜絵チャ」という名前でこの時期にやっているのですが
今年はとにかくフリーな感じで絵師さまに描いて頂きました。
と、言ってもこれを描きなさい、あれを描きなさいと
ほぼ私が命令して無理やりに(?!)描いてもらいましたが。
ゲストのみなさん、ほんとすばらしー。
おいらの注文に気持ちよく答えて下さいました。
絵を描かないかわりに、始終話しをもりあげてくださった、カンナしゃんと向日葵さん。
そして上の段の左から、
最近すっごいすっごい素敵漫画をサイトでUPされて
連日カオポンをハアハアさせてくれる「ぺるっこ」様。
(そんな紹介の仕方するなー!ってもれなく叱られそうw)
カンナしゃんと入れ違いに遊びにきてくれたタカセ嬢。
遅いよ、タカセ嬢!カンナしゃん帰っちゃうじゃないか。この落とし前、
体で返してもらうぜ!
と、いう事で
ちゃんと体で返してもらったよ。カンナしゃんw
新学期早々、教壇でゲキを飛ばす氷室てんてー。
ちなみに、氷室学級の生徒
全員、毛が一本。
全員、ネクタイが曲がってるぞ。
こんな生徒だが、がんばれば
教会でこくってもらえるぞ!
下の段の向かって左は、なぎのさん。
なぎのさんの描いてくれたキャラはね…
17歳の 。
つ・く・し
きゃっ…!
結婚してください、つくし!
禁煙半年を越えた彼女。みんなとワイワイやっているうちに、むずむずと
吸いたい気持ちにかられ、何度か耐え忍ぶ場面が。
だってさ、上の段のぺるっこ嬢の氷上くんも
お隣の、へーさんが描いてくれた斉藤くんも
みんな煙草吸ってんだよw。
ああもう、どうしてくれようと悶える彼女に
悪魔のささやきを繰り返すぺるっこ嬢。
描いては消す、描いては瞬時に消す中、
こんな素敵な絵も描いてました。
ちなみに、「カオポンさん、益田が禁煙してる話かいてw」とリクを頂いたので
絵チャの後、書いてみました。
気が向いた方は、下の方の「煙が目に染みる」を。
ちなみに、イカぽんも去年の夏から禁煙してるよ。
禁煙成功したら、ますますお酒が好きになっちゃって、逆に大変だよ。(笑)
こんな素敵なルカも描いてくれました。このルカが見れた時間も
ものすごく一瞬。
そして、お隣のへーさん。
去年の暮れから、ジンぐると言う話しをカオポンは書いてますが
この話にでてくる主人公は斉藤さん。
あのキャッチーな斉藤さん。
去年の暮れ、忘年会絵チャをやった時、
こんなかっけえ斉藤を描いてくれたんだよ!
そりゃあもう、あーた、話書かずにいれらないよ。
そん時は、絵チャの時間をおいらが
「今から話書くから、今日はこれにて終了!」と強引に
終わらせてしまうほど、凄い衝撃でした。
今、まだ序盤のところしか書いていないけれど
「ジンぐる」は益田さんの「珈琲スタンド」と同様に
じっくりと書き込んでいきたい話です。
へーさんの斉藤。独眼の斉藤。
ひゃあー、なんかあの視線で射抜かれてしまいそう。
そしてね、最後は智さん。
智さんの尽!
見たかったんだよ!
ほんと上手いね~。智さんの優しさがいっぱい溢れてる。
そして、ぽぽぽぽーんな人たちも。
智さんって、本当に癒されます。
お話してると、さすが関西人!と思えるほど面白い人なんですが。
何度か座布団あげたくなるような名言がありました。
絵は、この1枚目だけなの。
でも、この絵をお披露目するまでに、色々あったのよ。
さてと……。
今からバンドの練習に行ってきます。今年も5月にライブが決定したので、今日は少し練習をやりこんできます。
益田まつりのこととか、他にも色々と伝えたいことがありますので、また話の続きは明日にでも。
ではでは~
自宅で使用するものと違って、「そいつ」には少し癖が強すぎた。
ステージが始まってから3曲目は黙って弾いていたが、もう勘弁ならない。
それまできつく結んでいたネクタイを乱暴に解くと、氷室は忌々しそうにシャツのボタンを二つ外す。
なにかはじまるな。
氷室から少し離れた位置でその様子を見ていた益田は、「ふーん」と小さく鼻を鳴らす。
テーマの部分までは大人しくやっていたが、もう限界か。
じゃあ、次のソロから奴は荒れるな。
益田の思ったとおり、氷室は暴れた。
とじこめていた想いを解き放つかの様に、氷室の奏でるジャズコードは激しく音を重ねていく。
まるで難解な数式を神業的な速さで解いていくのと、それは良く似ている。
このリズムにそうきたか。随分変わった音を入れるんだな。何をそんなに息巻いてるんだ。
「おいおい、落ち着け」
そう言葉にする代わり、サックスで音をからませてみる。
だけど氷室は、少しも益田の音に調和する事は無かった。
ただただ荒れるだけだ。聴いている客は大いに盛り上がったが、まわりはたまったものじゃない。
予定していた曲を全ておえると、益田はどっとくたびれてしまった。
「もう、やだ」
最近のオマエの音。聴いていると何か疲れる。
もう、今度連中からお呼びがかかっても、俺はステージにあがらないよ。
薄暗く、狭い楽屋の中。益田は氷室に、そう苦言する。
「そうか。それはすまなかった」
乾いた声で、氷室は詫びる。
「限られた条件で自分の出せる力を最大限に発揮させるのは、困難を極める。
特に今日ほど癖のある音だとついカッとなって……」
後は気持ちで勝負しろって言うのか。そりゃあ、言いたいことはわかるさ。
だけどああも喧嘩売るようなピアノは御免だ。
「しかし益田。おまえも最近刺々しい音を出してるぞ」
前はもっと、お互いに優しい音を出していた。どうもこの頃、様子がおかしい。
「どうしちゃったんだろうな、俺達」
「ああ」
壁に背をもたれ、二人並んで息を吐く。
益田には左の、氷室には右の、それぞれの利き手に挟まった1本の電子煙草。
「こいつのせいか?楽器のせいじゃないと思うぞ」
「…そうだろうか」
おもむろに口に咥え、吸い込んでみる。手にした指のすぐ先で、芯のあたりがぼわっと光る。
もしかして、何か新しい発見があるかもと期待して深く吸い込んだものの、
この数日口にしたものと何も変わらない。口にするほど、それは酷く空しい味だ。
「君の推測は正しいかもしれない」
三口含んだ末、氷室はポツリと呟いた。
fin
絵チャの時、無性に煙草が吸いたくなってしまった、ある方に。
禁煙って大変ですね。
ちなみに、わたしに禁酒はできません。絶対に。
きっと、益田さんも先生も、禁煙はできないと思うよ。
ステージが始まってから3曲目は黙って弾いていたが、もう勘弁ならない。
それまできつく結んでいたネクタイを乱暴に解くと、氷室は忌々しそうにシャツのボタンを二つ外す。
なにかはじまるな。
氷室から少し離れた位置でその様子を見ていた益田は、「ふーん」と小さく鼻を鳴らす。
テーマの部分までは大人しくやっていたが、もう限界か。
じゃあ、次のソロから奴は荒れるな。
益田の思ったとおり、氷室は暴れた。
とじこめていた想いを解き放つかの様に、氷室の奏でるジャズコードは激しく音を重ねていく。
まるで難解な数式を神業的な速さで解いていくのと、それは良く似ている。
このリズムにそうきたか。随分変わった音を入れるんだな。何をそんなに息巻いてるんだ。
「おいおい、落ち着け」
そう言葉にする代わり、サックスで音をからませてみる。
だけど氷室は、少しも益田の音に調和する事は無かった。
ただただ荒れるだけだ。聴いている客は大いに盛り上がったが、まわりはたまったものじゃない。
予定していた曲を全ておえると、益田はどっとくたびれてしまった。
「もう、やだ」
最近のオマエの音。聴いていると何か疲れる。
もう、今度連中からお呼びがかかっても、俺はステージにあがらないよ。
薄暗く、狭い楽屋の中。益田は氷室に、そう苦言する。
「そうか。それはすまなかった」
乾いた声で、氷室は詫びる。
「限られた条件で自分の出せる力を最大限に発揮させるのは、困難を極める。
特に今日ほど癖のある音だとついカッとなって……」
後は気持ちで勝負しろって言うのか。そりゃあ、言いたいことはわかるさ。
だけどああも喧嘩売るようなピアノは御免だ。
「しかし益田。おまえも最近刺々しい音を出してるぞ」
前はもっと、お互いに優しい音を出していた。どうもこの頃、様子がおかしい。
「どうしちゃったんだろうな、俺達」
「ああ」
壁に背をもたれ、二人並んで息を吐く。
益田には左の、氷室には右の、それぞれの利き手に挟まった1本の電子煙草。
「こいつのせいか?楽器のせいじゃないと思うぞ」
「…そうだろうか」
おもむろに口に咥え、吸い込んでみる。手にした指のすぐ先で、芯のあたりがぼわっと光る。
もしかして、何か新しい発見があるかもと期待して深く吸い込んだものの、
この数日口にしたものと何も変わらない。口にするほど、それは酷く空しい味だ。
「君の推測は正しいかもしれない」
三口含んだ末、氷室はポツリと呟いた。
fin
絵チャの時、無性に煙草が吸いたくなってしまった、ある方に。
禁煙って大変ですね。
ちなみに、わたしに禁酒はできません。絶対に。
きっと、益田さんも先生も、禁煙はできないと思うよ。
ぽかぽかの陽気が続いたかと思うとぐっと一日中冷え込んだりと、
なかなか冬物がしまえない感じです。
でも、ちょっと無理してでも、薄着にしてます。
学生の時、友達相手に新聞とかフリーペーパーを作って、あげたりしていました。
久しぶりに作ってみました。その名も「へんたい新聞」。
6ページあります。ものすごくつまんない内容ばかり。
今朝、知人殿へ郵便で送ってみました。何にも予告もしていないから、びっくりするだろうなあ。
二ヶ月に一回ほど作ってみようかな、と、思います。今度は5月の終わりぐらいかな。
そういえば、今年の年賀状は全て宛先などを毛筆で書いてみました。久しぶりに筆で書いたけれど
これが、なかなか楽しい。
アナログな事も結構面白いものです。
話がびゅーんと飛びますが、ジョージさん主催の、したら先輩企画
終了されました。
面白かった!ジョージさんをはじめ、参加された方々、みんな素敵な作品でした。
どの先輩も、なんだか不器用で、おかしくで、愛しい。
ジョージさん、素敵な企画をこさえてくださって本当にありがとうございました。
そして、またまた、話はびゅーんと、飛びます。
先週の休みの日、久しぶりにビデオを見ました。20年前…もっと前だったのかな。
名古屋の駅裏にある小さな映画館へ、イカぽんと一緒に観に行きました。
映画を見たあとに入った「ヒマラヤのケーキ」で、たまごのサンドイッチとフルーツサンドイッチを食べたのを覚えているよ。
映画のタイトルは「マルセルの夏」
南フランス、プロヴァンス地方を舞台にした、少年の夏休みの物語。
主人公のマルセル少年と家族の、あたたかい雰囲気がとっても良いんだ。
1900年はじまりの頃の、家具とか食器とか照明とか、洋服とか。とにかく雰囲気が良いんだよ。
この映画は、凄く良いですよ!続編の「マルセルのお城」もオススメですよ。
おひさしぶりです。
仕事もやっと今年度を終える事ができて、昨日から春休みをもらっています。
朝早く起きて弁当を作って、ゴミを出して、洗濯をして、
最後のズームインを見る。
こんな小さな事でも幸せだなあと、思います。
はじめのうちは、ただ、ただ心が痛むばかり。
テレビを見ては泣いて、ラジオを聴いては泣いて。
でも泣いてばかりじゃいけないと思いました。
その後は、職場を通じて物資を集めて送ったり、募金活動をしたりと、
微力ながら少しでも力になりたいと思って
この数日やっておりました。
本当に、微力でした。そのことを痛感した数日でした。
今は感傷に浸っておりません。
今までの暮らしを、できるだけ変えないように。
いつも買い物に行く市場で、八百屋のおじさんがこんな事言ってました。
「この前、ほうれん草が危ないって政府が言うからさあ、
昨日から全然ほうれん草が売れなくなっちゃったんだよ。
愛知県産だって言っても買わないんだよ。ったく、どうかしてるよ」
ほんと、どうかしてる。
私はどこの産地でも美味しく頂きます。
それを毒にするかしないかは、個人の暮らし方次第。
飲料水の入ったペットボトル。どこに行っても見当たりません。
家の水で十分だよ。頼むから落ち着けよ。頼むから。
さてわたくし。
ぼちぼち何かはじめないと。
書きたいこと、伝えたいこと、色々あります。
子どもの頃、一度だけ生き物を飼った。子どもと言ってもそんなに昔ではない。今から5年前だ。
蝉やザリガニ、カブト等は当時の自分としては飼育の対象では無かった。遊びで捕まえることはあっても、捕まえた時点でその目的は達成していた。それよりも図鑑を広げて動かない物を眺めている方が好きだった。
なのに、あれだけはどうしても飼ってみたかった。それも絶対に番(つがい)で欲しかった。
親に言うと、最初のうちは随分反応が厳しかった。
どうして二匹なの?それも番じゃないといけないなんて。増えたらどうするの?他所の所で聞いたけれど、とんでもないぐらい増えるらしいわよ。ちゃんと面倒見れるの?玉緒……。
どう言われ様と、僕はあれを飼いたい。飼っても良いと言ってもらえるまで、絶対に口をきいてやるものか。
家で叱られるようなことは一度も無い。休む間も無いほど塾通いで予定を勝手に埋められても、一度も反抗しなかった僕は、この時はじめて親に抵抗した。僕の頑な態度に、親は勿論のこと、少し年の離れた姉も驚きを隠せない様子だった。
反抗期なんだよ、タマちゃんは。
のんきな口調で姉はそう親に説明しているのを聞いたけど、僕は聞こえないふりをした。
そしてむっつりと黙ったまま、僕は一冊の本を読んでいた。
きっかけはこの小説からだ。作者の思春期の頃を書いたその話が、僕の心を強く突き動かした。
あれを飼うと、本当にそんな気持ちになるのか。
そんなに、体のどこかが、それまで知らなかった感覚に陶酔してしまうのだろうか。
知ってみたかった。作者と同じものを飼って、その気持ちをどうしても共感したかったのだ。
結局、僕の主張は何とか聞き入れてもらうことができた。
ただし、望まない中学受験をさせられて、きちんと合格する事を条件としてだ。
当時親友だった子は、地元の中学に進学することが決まっていた。
親友をとるか、それとも受験をするか。結論を決めるのに、あまり時間はかからなかった。
その日から徹夜で勉強をして、僕は合格を決めた。そして合格した翌日、僕は念願のそれをつがいで飼い始めた。
そして、あれほど飼うことを反対していた親が、飼いはじめたら一番可愛がっていた。
つがいなのに、「うー子」と「みー子」なんて変な名前を勝手につけて、我が家の中で一番新鮮な野菜を与えていた。
名前なんてどうでも良かった。とにかく、話の中にでてきたあの描写を、この目で見たい。
赤い眼に垂れた耳。
----タマちゃん、どうしよう。凄く可愛いよ。私の手から餌食べるようになったよ。
姉も親と同様に可愛がる。どうしようと聞かれても、僕は何も答えなかった。
可愛くて結構。それよりも、あの描写を早く見せてくれ。
ゲージの中の二匹に向かって、僕は心の中でそう命令する。だけど奴らは黙々と、与えられた物をぼりぼりと齧っているだけだった。
もしかして、番(つがい)ではなかったのかもしれない。
増殖するのを恐れて、親は初めから同性を二匹用意したのかもしれない。
そう疑う様になったのは、飼い始めてから二月した時だった。
期待していたあの描写が、何も再現されないのに随分やきもきしていた。
ひょっとしたら自分が学校に行っている間に、あれをしているのかもしれない。
そう思うと、登校するのを辞めたいとさえ思うようになってしまった。
やがて季節は梅雨時を迎え、蒸し暑くなってくると、僕は新しい問題を抱えることになった。
奴らの匂いが部屋の中で篭るようになったのだ。
犬や猫に比べれば、ずっと控えめかもしれない。
だけど奴らは独特な匂いを僕の限られた空間に放つ。
しだいにカタカタとゲージを奮わせる音も耳につくようになり、僕はすっかり奴らとの同居が嫌になってしまったのだ。
-----だから言ったじゃない。あれは外で飼うものなのよ。ほんと、タマちゃんは考えが足りないって言うか。
部屋で飼う事を断念した僕に向かって言った姉の言葉、僕は今でも忘れられない。
高校を卒業して、急に大人っぽくなった姉の顔。
口調は相変わらずおっとりとしているが、その表情は大人の女性そのものだった。
口紅を引いた口元が凄く卑猥に感じて、僕は思わず顔を背けた。そして、僕が心の奥で求めていた憧れや希望が、姉の一言で一瞬に消えてしまった様な気がした。
思わず僕は、姉の頬を手ではたいてしまった。物心がついた時から、喧嘩なんて一度も無かったのに、その時はじめて、姉を酷く憎んだ。
今思うと、あんなに憎む事では無いと思うのだが、あの時はどうしようも無かったのだ。
物語に描かれたあの部分は、僕にとって深い情緒を持っていた。
あの情緒に触れた事で、僕はこれからどう、その情緒と向き合っていかなくてはならないのか、真剣に悩んでいた。
拒絶しようとすればするほど、それは強く僕の心を魅惑する。
そして、その想いは体の一部にも強く影響を与える。
あの一件以来、僕と姉は距離を置くようになった。僕はもう、子どもではない。姉は、そう悟ったのだ。
程無くして奴らは、家の外で飼われる様になった。ただし、野良猫やカラスに襲われないようにと、小さな車庫の隣にゲージは置かれた。
僕達の、それまでの過剰な可愛がりから解放されて、奴らははじめて自由な雰囲気を味わっていた。
ただし狭いゲージの中に閉じ込められてはいるけれど、それまでよりはずっと開放感を感じたに違いない。
奴らの眼は急に輝きはじめ、狭い空間の中を忙しく動き回るようになった。
白い毛と茶色の毛が、ゲージの隙間から毛埃の塊となって、幾つも外へ出されていく。
何かが変わる。僕は漠然と、そう予感した。
僕の予感が当ったのは、それから数日後。期末テストが始まって、いつもより早く家に戻ってきた時だった。
前の日から降り続く雨が車庫の屋根を伝い、地面に小さな穴を規則的に構成する。
ずぶぬれの体のまま、自転車を車庫に入れようとしたとき、それは起こった。
ゲージは銀色の格子。7月の生ぬるい雨粒が数滴伝っていた。何気なく覗いた囲いの中、奴らは僕から完全に背を向けて丸いからだを震わせている。
あれは確かウー子の方だった。ピーターラビットを思わせる薄茶色の長い毛。
ミー子の体を背後からしっかりと押さえつけ、かくかくと小刻みに尻を振る。
たっぷりと肉のついた尻はミー子の真っ白な尻にぴたりと合わさっている。
時間にして1分ぐらい。
ウー子は紛れも無く雄だった。わずかな隙を見つけて逃げようとしたミー子の耳を齧ると、更に激しく尻を振る。
姉さんや母さんを和ませた愛らしさは何処にもなく、真っ赤に燃える眼でミー子を支配する。
「チッ・チッ」
突然、ミー子の鳴き声が聞こえた。鳴かない動物だと信じていた自分は、ミー子の一声で相当なショックを受けた。
それは助けを求めているようには聞こえなかった。この、特別な行いをしている時にだけミー子は声を漏らすのかもしれない。
濡れたような目で、ミー子はどこかを見つめていた。
これか。
僕は心の中で唸った。
これが、あの風景だったのか。
津軽に生まれた面長の男は、頬杖をつきながらアンニュイな表情で、この情景を眺めていたのだろうか。
そしてひっそりと胸をときめかせていたのだろうか。
クライマックスを迎える頃には、ウー子はもう、一羽の兎では無くなっていた。
兎の面を借りた、獣の姿だ。
僕はウー子が力尽きるまで見届けると、部屋に行った。僕もいつかは、ウー子と同じ様な事をするのだろうか。
できればミー子の様な、色の白い子だと良い。尻の形がきれいな子だと良い。
その夜僕は、もういちどあの本を読んでから眠りについた。
たかが兎の交尾。だけど、僕はあの話を読むたびに胸がドキドキする。
そしてやっと自分の目で確かめることができたのだけど、僕は彼ほど興奮することは出来なかった。
彼の想いを共有できるようになったのは、つい最近の事。兎を飼い始めてから随分経っている……。
笑うとぽちっとえくぼのある、色白の女の子。
小柄で痩せているけれど、水着を着せてみたら、色んなところが程よく膨らんでいた。
僕が好きになった人「小波みなこ」は、そんな感じの子。
僕は見栄っ張りだから、極力彼女には自分の気持ちを見せないようにしている。
本当は手を繋いでみたいし、できたらキスだってしてみたい。
叶うのなら、僕もウー子の様に彼女を背後から押し倒したい。
そして激しく腰を振ってみたい。
だけど僕は耐えてみせる。彼女の前では常に礼儀正しく優しい先輩でありたい。
学習で遅れている部分があったら、余裕を持って教えてあげたい。
「紺野せんぱい」
ほら、また、あの甘い声で僕の名前を呼んでいる。
全く君は、さっきから隙だらけだ。どうしてそんなに丈の短いスカートを履いて、僕の前にいるんだ。
どうしてそんなに胸のあいた服を着ているんだ。
どうしてそんなに……魅力的なんだ。
「あのね、みなこさん」
彼女がくしゃみをしたのを切欠に、僕は羽織っていたカーディガンを脱いだ。
「もっと温かいのを着てきて下さい」
僕はそっと彼女の背中にカーディガンをかけた。
「だって……」
「そんなんじゃ、風邪ひくよ」
できるかぎり慈愛を込めて、僕は彼女を戒める。
「僕の姉さんが言っていたけど、女の子はその……あんまり腰を冷やすといけないって」
「どうして?」
本当にわからないと言う感じで僕を見つめる君。僕はやれやれとため息をつく。
「どうしてって、その。ほら、冷やすと赤ちゃんができにくいとか……聞いたことない?」
「……あっ」
やっとわかったのか、顔を赤らめると、羽織ったカーディガンのボタンをとめようとする。
「ねっ。もっと自分の体を大切にしなよ」
そうだよ。僕のためにもね。
いつか君と子どもを作るためにも、大切にして欲しいんだよ。
僕はきっと、あの兎と同じぐらい、君を責め続けるよ。だから…ね。
小柄な体の君は、僕の白いカーディガンをまとうと、更に可愛さを増す。
まるで兎の様だ。
fin
玉緒ちゃん。クロ玉緒ちゃん。
ちなみに、玉緒ちゃんが兎を飼いたいと触発された物語、タイトルは「思ひ出」。
誰の作品かは、ぐぐってみてw
私はこの作品を14の頃に読んで、ものすごく悶々としたのを覚えています。
蝉やザリガニ、カブト等は当時の自分としては飼育の対象では無かった。遊びで捕まえることはあっても、捕まえた時点でその目的は達成していた。それよりも図鑑を広げて動かない物を眺めている方が好きだった。
なのに、あれだけはどうしても飼ってみたかった。それも絶対に番(つがい)で欲しかった。
親に言うと、最初のうちは随分反応が厳しかった。
どうして二匹なの?それも番じゃないといけないなんて。増えたらどうするの?他所の所で聞いたけれど、とんでもないぐらい増えるらしいわよ。ちゃんと面倒見れるの?玉緒……。
どう言われ様と、僕はあれを飼いたい。飼っても良いと言ってもらえるまで、絶対に口をきいてやるものか。
家で叱られるようなことは一度も無い。休む間も無いほど塾通いで予定を勝手に埋められても、一度も反抗しなかった僕は、この時はじめて親に抵抗した。僕の頑な態度に、親は勿論のこと、少し年の離れた姉も驚きを隠せない様子だった。
反抗期なんだよ、タマちゃんは。
のんきな口調で姉はそう親に説明しているのを聞いたけど、僕は聞こえないふりをした。
そしてむっつりと黙ったまま、僕は一冊の本を読んでいた。
きっかけはこの小説からだ。作者の思春期の頃を書いたその話が、僕の心を強く突き動かした。
あれを飼うと、本当にそんな気持ちになるのか。
そんなに、体のどこかが、それまで知らなかった感覚に陶酔してしまうのだろうか。
知ってみたかった。作者と同じものを飼って、その気持ちをどうしても共感したかったのだ。
結局、僕の主張は何とか聞き入れてもらうことができた。
ただし、望まない中学受験をさせられて、きちんと合格する事を条件としてだ。
当時親友だった子は、地元の中学に進学することが決まっていた。
親友をとるか、それとも受験をするか。結論を決めるのに、あまり時間はかからなかった。
その日から徹夜で勉強をして、僕は合格を決めた。そして合格した翌日、僕は念願のそれをつがいで飼い始めた。
そして、あれほど飼うことを反対していた親が、飼いはじめたら一番可愛がっていた。
つがいなのに、「うー子」と「みー子」なんて変な名前を勝手につけて、我が家の中で一番新鮮な野菜を与えていた。
名前なんてどうでも良かった。とにかく、話の中にでてきたあの描写を、この目で見たい。
赤い眼に垂れた耳。
----タマちゃん、どうしよう。凄く可愛いよ。私の手から餌食べるようになったよ。
姉も親と同様に可愛がる。どうしようと聞かれても、僕は何も答えなかった。
可愛くて結構。それよりも、あの描写を早く見せてくれ。
ゲージの中の二匹に向かって、僕は心の中でそう命令する。だけど奴らは黙々と、与えられた物をぼりぼりと齧っているだけだった。
もしかして、番(つがい)ではなかったのかもしれない。
増殖するのを恐れて、親は初めから同性を二匹用意したのかもしれない。
そう疑う様になったのは、飼い始めてから二月した時だった。
期待していたあの描写が、何も再現されないのに随分やきもきしていた。
ひょっとしたら自分が学校に行っている間に、あれをしているのかもしれない。
そう思うと、登校するのを辞めたいとさえ思うようになってしまった。
やがて季節は梅雨時を迎え、蒸し暑くなってくると、僕は新しい問題を抱えることになった。
奴らの匂いが部屋の中で篭るようになったのだ。
犬や猫に比べれば、ずっと控えめかもしれない。
だけど奴らは独特な匂いを僕の限られた空間に放つ。
しだいにカタカタとゲージを奮わせる音も耳につくようになり、僕はすっかり奴らとの同居が嫌になってしまったのだ。
-----だから言ったじゃない。あれは外で飼うものなのよ。ほんと、タマちゃんは考えが足りないって言うか。
部屋で飼う事を断念した僕に向かって言った姉の言葉、僕は今でも忘れられない。
高校を卒業して、急に大人っぽくなった姉の顔。
口調は相変わらずおっとりとしているが、その表情は大人の女性そのものだった。
口紅を引いた口元が凄く卑猥に感じて、僕は思わず顔を背けた。そして、僕が心の奥で求めていた憧れや希望が、姉の一言で一瞬に消えてしまった様な気がした。
思わず僕は、姉の頬を手ではたいてしまった。物心がついた時から、喧嘩なんて一度も無かったのに、その時はじめて、姉を酷く憎んだ。
今思うと、あんなに憎む事では無いと思うのだが、あの時はどうしようも無かったのだ。
物語に描かれたあの部分は、僕にとって深い情緒を持っていた。
あの情緒に触れた事で、僕はこれからどう、その情緒と向き合っていかなくてはならないのか、真剣に悩んでいた。
拒絶しようとすればするほど、それは強く僕の心を魅惑する。
そして、その想いは体の一部にも強く影響を与える。
あの一件以来、僕と姉は距離を置くようになった。僕はもう、子どもではない。姉は、そう悟ったのだ。
程無くして奴らは、家の外で飼われる様になった。ただし、野良猫やカラスに襲われないようにと、小さな車庫の隣にゲージは置かれた。
僕達の、それまでの過剰な可愛がりから解放されて、奴らははじめて自由な雰囲気を味わっていた。
ただし狭いゲージの中に閉じ込められてはいるけれど、それまでよりはずっと開放感を感じたに違いない。
奴らの眼は急に輝きはじめ、狭い空間の中を忙しく動き回るようになった。
白い毛と茶色の毛が、ゲージの隙間から毛埃の塊となって、幾つも外へ出されていく。
何かが変わる。僕は漠然と、そう予感した。
僕の予感が当ったのは、それから数日後。期末テストが始まって、いつもより早く家に戻ってきた時だった。
前の日から降り続く雨が車庫の屋根を伝い、地面に小さな穴を規則的に構成する。
ずぶぬれの体のまま、自転車を車庫に入れようとしたとき、それは起こった。
ゲージは銀色の格子。7月の生ぬるい雨粒が数滴伝っていた。何気なく覗いた囲いの中、奴らは僕から完全に背を向けて丸いからだを震わせている。
あれは確かウー子の方だった。ピーターラビットを思わせる薄茶色の長い毛。
ミー子の体を背後からしっかりと押さえつけ、かくかくと小刻みに尻を振る。
たっぷりと肉のついた尻はミー子の真っ白な尻にぴたりと合わさっている。
時間にして1分ぐらい。
ウー子は紛れも無く雄だった。わずかな隙を見つけて逃げようとしたミー子の耳を齧ると、更に激しく尻を振る。
姉さんや母さんを和ませた愛らしさは何処にもなく、真っ赤に燃える眼でミー子を支配する。
「チッ・チッ」
突然、ミー子の鳴き声が聞こえた。鳴かない動物だと信じていた自分は、ミー子の一声で相当なショックを受けた。
それは助けを求めているようには聞こえなかった。この、特別な行いをしている時にだけミー子は声を漏らすのかもしれない。
濡れたような目で、ミー子はどこかを見つめていた。
これか。
僕は心の中で唸った。
これが、あの風景だったのか。
津軽に生まれた面長の男は、頬杖をつきながらアンニュイな表情で、この情景を眺めていたのだろうか。
そしてひっそりと胸をときめかせていたのだろうか。
クライマックスを迎える頃には、ウー子はもう、一羽の兎では無くなっていた。
兎の面を借りた、獣の姿だ。
僕はウー子が力尽きるまで見届けると、部屋に行った。僕もいつかは、ウー子と同じ様な事をするのだろうか。
できればミー子の様な、色の白い子だと良い。尻の形がきれいな子だと良い。
その夜僕は、もういちどあの本を読んでから眠りについた。
たかが兎の交尾。だけど、僕はあの話を読むたびに胸がドキドキする。
そしてやっと自分の目で確かめることができたのだけど、僕は彼ほど興奮することは出来なかった。
彼の想いを共有できるようになったのは、つい最近の事。兎を飼い始めてから随分経っている……。
笑うとぽちっとえくぼのある、色白の女の子。
小柄で痩せているけれど、水着を着せてみたら、色んなところが程よく膨らんでいた。
僕が好きになった人「小波みなこ」は、そんな感じの子。
僕は見栄っ張りだから、極力彼女には自分の気持ちを見せないようにしている。
本当は手を繋いでみたいし、できたらキスだってしてみたい。
叶うのなら、僕もウー子の様に彼女を背後から押し倒したい。
そして激しく腰を振ってみたい。
だけど僕は耐えてみせる。彼女の前では常に礼儀正しく優しい先輩でありたい。
学習で遅れている部分があったら、余裕を持って教えてあげたい。
「紺野せんぱい」
ほら、また、あの甘い声で僕の名前を呼んでいる。
全く君は、さっきから隙だらけだ。どうしてそんなに丈の短いスカートを履いて、僕の前にいるんだ。
どうしてそんなに胸のあいた服を着ているんだ。
どうしてそんなに……魅力的なんだ。
「あのね、みなこさん」
彼女がくしゃみをしたのを切欠に、僕は羽織っていたカーディガンを脱いだ。
「もっと温かいのを着てきて下さい」
僕はそっと彼女の背中にカーディガンをかけた。
「だって……」
「そんなんじゃ、風邪ひくよ」
できるかぎり慈愛を込めて、僕は彼女を戒める。
「僕の姉さんが言っていたけど、女の子はその……あんまり腰を冷やすといけないって」
「どうして?」
本当にわからないと言う感じで僕を見つめる君。僕はやれやれとため息をつく。
「どうしてって、その。ほら、冷やすと赤ちゃんができにくいとか……聞いたことない?」
「……あっ」
やっとわかったのか、顔を赤らめると、羽織ったカーディガンのボタンをとめようとする。
「ねっ。もっと自分の体を大切にしなよ」
そうだよ。僕のためにもね。
いつか君と子どもを作るためにも、大切にして欲しいんだよ。
僕はきっと、あの兎と同じぐらい、君を責め続けるよ。だから…ね。
小柄な体の君は、僕の白いカーディガンをまとうと、更に可愛さを増す。
まるで兎の様だ。
fin
玉緒ちゃん。クロ玉緒ちゃん。
ちなみに、玉緒ちゃんが兎を飼いたいと触発された物語、タイトルは「思ひ出」。
誰の作品かは、ぐぐってみてw
私はこの作品を14の頃に読んで、ものすごく悶々としたのを覚えています。
みなさん、お元気ですか?
カオポンは元気でやっております。
美味しいお酒をちびちびやりながら、気がつくと寝ております
カオポンの仕事には「卒業式」という取り組みがこの時期にあるので
毎年いろんな想いを抱えながら過ごしております
切ないけれど、送り出す幸せも感じます。
そうそう。
カオポンのサイトね
明後日で三歳を迎えるの。
みなさんのお陰で楽しく続けさせてもらっています。
本当にありがとう。
こどもはね、三歳の頃が一番言葉を沢山覚えるのね。
カオポンも、もっともっと読んでくれた人の心に残るような言葉を綴れるようになりたいな。
まだまだ未熟な部分がいっぱいあるけれど、自分なりに頑張ってみようと思うのよ。
みなさん、これからもよろしくね。
ウェブ拍手、毎日ありがとうございます。
素敵なコメントを残してくださってありがとうございます。
仕事に疲れすぎて心が乾いてしまいそうな時、頂いたコメントを読み返しては元気をもらっています。
おひとりおひとりにお返事をさしあげたいのですが、
あともう少しお待ちくださいませ。
はあああ。
尽とタイラーと益田さんと零一さんと千晴くんと総一郎さんと大迫せんせいと、最後に斉藤くんも一緒に
お花見がしたい。
そんな夢を見たいな。
ではではw
PS…monmonの方でお話を1つ。電車にのって玉緒さんは……。
カオポンは元気でやっております。
美味しいお酒をちびちびやりながら、気がつくと寝ております
カオポンの仕事には「卒業式」という取り組みがこの時期にあるので
毎年いろんな想いを抱えながら過ごしております
切ないけれど、送り出す幸せも感じます。
そうそう。
カオポンのサイトね
明後日で三歳を迎えるの。
みなさんのお陰で楽しく続けさせてもらっています。
本当にありがとう。
こどもはね、三歳の頃が一番言葉を沢山覚えるのね。
カオポンも、もっともっと読んでくれた人の心に残るような言葉を綴れるようになりたいな。
まだまだ未熟な部分がいっぱいあるけれど、自分なりに頑張ってみようと思うのよ。
みなさん、これからもよろしくね。
ウェブ拍手、毎日ありがとうございます。
素敵なコメントを残してくださってありがとうございます。
仕事に疲れすぎて心が乾いてしまいそうな時、頂いたコメントを読み返しては元気をもらっています。
おひとりおひとりにお返事をさしあげたいのですが、
あともう少しお待ちくださいませ。
はあああ。
尽とタイラーと益田さんと零一さんと千晴くんと総一郎さんと大迫せんせいと、最後に斉藤くんも一緒に
お花見がしたい。
そんな夢を見たいな。
ではではw
PS…monmonの方でお話を1つ。電車にのって玉緒さんは……。
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