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極楽鳥の様に艶やかな衣装を身にまとって、明るい表通りを闊歩するあの人は、
いつも道行く人の好奇の眼差しを一杯に受けていた。
普通なら怯んだり怖気つくところを、あの人は極上の笑みを持って全てを受け止めていた。
「小悪魔ちゃん、いい?大事なのは自分をよく知るって事よ。
人からどう見られようと、どう思われようと、私はわたし。
それが分かっていれば、何も怖い事は無い。そう、何もね…」
それまであの人の事を見た目や行動の奇抜さだけにとらわれて、
特別な物でも見るように思っていた私は、
その一言で思いが変わった。
あの人の気高さに触れるたびに、私は憧れていった。

「ゴローさん」
「なに」
「今日は月が蒼いですね」
「そうね」
月に照らされて地面に落ちたあの人の影は、昼間に見るものとは随分違うと思う。
体中から張り詰めていた気が、夜の冷気の中で緩んでいるような…少しだけ儚げに感じてしまう。
「お酒は美味しかったですか」
「そうね、今日のモルトは何時になく香りに深みを感じたわ。ベルベットみたいな深い紅のね。
そういえば、アンタ。どうして店の中に入ってこなかったの?お酒の一杯ぐらい、ご馳走したのに」
何となく入らない方が良いと思って。
そう素直に伝えると、あの人は「ふうん」と相槌を打った。
そして暫く黙ったまま、私たちは歩いた。

あの人の家は店から10分程の距離にあった。
30年前は遊郭だった一軒家を改築した、モダンな造りの家だ。
当時窓に使われていた色ガラスや赤い絨毯はそのままにして、
部屋の中は彼の心眼に叶った調度品がさりげなく置かれてる。
オフィスとして使用しているビルの他に、国内に数箇所別荘を所有しているけど、
この場所については殆ど誰にも知らせていないのだと、あの人は言っていた。

「ここを知っているのは、アンタともう一人。
昔からの友達なんだけど、最近は向こうも色々と忙しくてね」
はじめてここを訪れた時、とても香の良い紅茶を出してくれた。
そして取り留めの無い話をしたあと、帰りに綺麗なブローチをお土産にくれた。
それ以来、時々あの人は私をここへ招いてくれる。
美味しい紅茶と、クッキー。極上の洒落た会話。そして素敵なお土産。
ここで貞操を失う危機感は皆無に等しい。

玄関の鍵をあけて、がらがらと引き戸をあけると、中から猫が主人の帰りを出迎えに来た。
「おお、モンタン。良い子にしてたわね」
抱き上げて喉元を撫でさすると、猫は嬉しそうに喉を鳴らす。
靴を履いたまま二階へ続く階段を上がっていくと、あの人は部屋に入るなりベッドに突っ伏した。
「はあー、飲みすぎたわ」
「酔いました?」
「そうね、結構酔ったわ」
ベッドからはみ出している足元に近づくと、まだ履いたままのサンダルを脱がせた。
特注であつらえた物だろう。私にくれた物と同じデザインなのに、その足の大きさでかなりごつく見える。
「あ、そこ!」
何気なく触れた足裏に、あの人は声をあげた。
「もっと押して頂戴」
言われたとおりに土踏まずの辺りを強く押すと、あの人はよがった様な声をあげた。

「ゴローさん」
サンダルを脱いで、私もベッドの上に上がった。
横たわるとなかなかの大男で、キングサイズのベットでも狭く見える。
あいたところを見つけて正座すると、それまで目を瞑っていたあの人がそっと薄目を開けた。
「小悪魔ちゃん」
「はい、ゴローさん」
「女の子が自分から男の寝床に上がりこむなんて」
「はしたない…ですか?」
「そうね」
そう言いながら、腕を伸ばして私を引っ張った。されるまま、私はあの人の隣に寝そべった。
「コートぐらい脱ぎなさい」
小言を続けながらも、あの人は私のコートのボタンを外した。
そして中に着ていたシフォンのワンピースのファスナーの手をかけた。
「ゴローさん」
さすがに恥ずかしくなって、私は少しだけ抵抗した。
服を脱いで下着だけになったとしても、きっとあの人は私と体を交える事は無いと思う。
「ぼんそわーる」
すっかり余裕を失った私を面白がるかの様に、あの人は私の服を剥いでいく。
そして震える私の体をきゅっと包み込むと、あの人は私の耳元に囁いた。

「さあ、答えて頂戴。あのとき流れていた曲の名前は?」
組し抱くあの人の、体の重さが心地良い。私はうっとりと目を閉じた。



FIN


あとがき…花椿さんと子悪魔ちゃん。二人は仲良し。
でも、二人は心は通っても体を交わすことは出来ないのね。
小悪魔ちゃんはゴローさんに対して次第に異性として惹かれていくんだけど、
ゴローさんは彼女を一人の人間として愛情を注ぐ。だから結ばれる事は無いのね。
小悪魔ちゃんがビジネスで成功していくまで、ずっと応援していくんだ。
成功して、二人が離れた後もゴローさんは応援していくんだな。
小悪魔ちゃんは、フランスの有名なシャンソン歌手、エディットピアフみたいな雰囲気の子だと良いな。

なーんて、ゴローちゃんネタで色々妄想が広がります。


さて、「益田祭り」。土曜日、一人で悶々とあーでもないこーでもないと、HTMLをなぶっていたら
3年前の祭りの時に手伝ってくれたあの人が「しょうがないねー」と腰をあげてくれました。
あ、ここでいうあの人とは家人でございます。前のサイトの時は色々手伝ってもらってまして、
今のサイトは「もう、やんないよー」と言ってたのですが、
「これから毎日アイスを食べさせてあげる」の言葉にひっかかりました。
やたっ。一緒にがんばってもらおうじゃないか。
と、ここに書いた以上、がんばってもらうぞー。
ちなみに、益田祭りは3年前にやった時は「ジャズフェス」でした。
今年はもっと自由に。5月12日からはじめようかなと思ってます。
また、告知サイトも作ろうと思いますので、良かったら御参加ください。(絵でも、テキストでも)
GS2が盛り上がっている中、ちょっと流れから外してると思いますが、やっぱ益田さん好きなんですよー。



では拍手のお礼です。(続はこちら、からどーぞ)












Postscript
チェルシーさんへ

こんにちは~チェルシーさん。どうもこちらにまで来て下さって有難うございます。
解析でリンクして下さってるのを知った時、とても嬉しかったです。
どうしよう、知らないふりした方がいいのかな、
でもありがとうって気持ちは伝えたいな。こんなサイトをリンクして下さる方なんて滅多にいないし。
なんて思っているうちに数日が過ぎて。
その後、葉月くんのお話の連載を読んで、ますます素敵な話を書かれるなあと思いまして
先日思いきって拍手させてもらったのですが。
結構ドキドキしました。(笑)

これからどうぞよろしくお付き合い下さいませ。お話の続き、ほんと楽しみにしてますので!
益田祭り、ぼちぼち始めようかなあと思ってます。今回は投稿参加型のお祭りにしようかと。
良かったら、チェルシーさんも如何ですか?(笑)
チェルシーさんのお話、読んでみたいですねぇ。

ではでは、どうも有難うございました。

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益田まつり~v
2008/04/28(Mon) res
カオポンさん、お邪魔いたします~v
先日のブログで益田祭りを開催しようと思うんだけど誰か一緒にしてくれる人いないかな~>なんておっしゃっていたので、心がグラッ!と揺れたのですが「足軽」でもお役に立てる自信が無かったのです。が、「あの方」がお手伝いくださるのですね~v良かったです~vvvv
わたしからも「あの方」にアイス献上させていただきたいですv

3年前の「益田祭り」・・・。懐かしいなぁv
とっても盛り上がりましたねv私も2枚もイラスト投稿しました。必死こいて描いた記憶があります。
いろんな方の益田がたくさん見れてとっても素敵な思い出です。

お仕事しながら企画運営は大変かと思います。くれぐれも無理をされませんように。
ありがとうございます~
2008/04/30(Wed) res
さつきさん、こんにちは~。
そうなんです、おいらのあまりにもショボイHTMLを見て我慢がならなかったみたいで、「やる!」と言ってくれました。お陰で何とかできそうな感じです。
そういえば、3年前。さつきさんは物凄く気合の入った益田絵を投稿して下さいましたね。当時、相方と一緒に「凄く塗りが上手いなぁ」と感心して見ておりました。今回は自由に絵でもお話でも投稿を受けようと思っているのですが、どうです?さつきさん。
私としてはさつきさんの素晴らしい絵を是非とも拝見したいものです。
もし、気が向かれましたらよろしくお願いします!

連休も殆ど無い状態ですが、出来る範囲で楽しめたらなあと思います。
温かいお気遣い、本当にありがとうございます!
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