子どもの時はね、グリンピースがだいっきらいでした。
大大大の、だーいっきらい!ってやつでした。
母さんがね、グリンピース好きなのよ。
だから、春になると何日も続けてグリンピース御飯。
あの御飯を炊いている時の、どくとくの豆臭さがたまんない。
子どもの頃、春になると母さんはつわりで苦しんでいたような気がする。
カオポンを産んでいらい、
母さんは何度も何度も身篭ったのだけど、そのたびに最後まで育つことがなかったんだ。
つわりで気持ち悪いと伏せる母さん、
グリンピースの匂いがきついと伏せる私。
遊ぶ相手のいない部屋の中で、広告の裏紙に
「まめごはん、きらい」と書いたそうな。
きっと、母さんの不安定な心身の状態も子どもなりに察していて
同じ様な気持ちになっていたんだね。
大人になって、「先生」という肩書きをもらった初めての春。
家庭訪問先で、晩御飯によばれる事があって、そこの食卓に出されたのが
豆御飯。
本来なら、生徒の家で御飯なんて呼ばれちゃいけないのだけど
その時はどうしても、そこの家のお父さんと腹を割って話さなくちゃいけない事情があって
時間的に飯を一緒にすることになってしまったのね。
どーんと、出された豆御飯。
正直、どうしようと思ったよ。
頭の奥で母さんが苦しんでいる姿がちりちりと浮かぶんだ。
これは喰わないとまずいな。とにかく目を瞑ってでも食べて、吐きそうになったらトイレを借りよう。
そう覚悟を決めて、一口入れたらさ。
「おいしい!」
って、思わず声に出して叫んでしまうほど、その豆御飯は美味しかったのよ。
そうしたら、「そうですか」とお父さんがニコニコしちゃってね。
その後は息子さんの素行について、色々と話ができました。
あの時の豆御飯、本当に美味しかった。
後で聞いたら、炊く時に塩をいれるんだって言っていた。
うちの母さんはね、塩をいれないのよ。
だから豆臭かったのかなあ。
それから、もっと月日が経って、カオポンは「奥さん」と言う肩書きももらえた。
いつもてきとーに色んなことを済ませているけれど
豆を炊くときはちょっと気を使うようになった。
丁寧に米をといで
塩をひとつまみ、お水も足して、最後にちょっと良いお酒も入れちゃう。
料理酒で十分良いと思う。
ちなみに、愛知県は碧南市の味醂屋さんが作っている料理酒が好き。
そしてお豆さんも一緒に炊いてみる。
炊き上がるとき、とっても良い匂いがするんだよ。
それを弁当箱にぎゅっとつめてね。
さあ食べようって、お弁当の蓋をあけるときが
楽しみなんだ。
まめごはんは、春の味ですよ。
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