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停めていた車のほうへ歩いていると、その向こうに何かを見つけたようだ。
「おっ!」と嬉しそうな声で駆け寄っていく先には、一本の木があった。
桜でも銀杏でも無い、すぐには名前が思いつかない様な木。
だけど益田さんは、何年ぶりかに再開した友人を相手にするかの様に、
「うわあーー」と言ってその幹に抱きついた。
そして木の枝を見上げると、すっと手を伸ばして四方に垂れ下がった枝をつかんだ。
やわらかな葉の下に、見たことも無い実が鈴なりに生っている。
「なに?」と訝る私の反応に、益田さんは嬉しそうに鼻を膨らませた。


そして枝から実を幾つかもぎ取ると、私の方を向き直った。
「ほら」
ゆるく握った手を開いてみせる。
手の中には、赤黒く熟した実が3つ。
1つはつぶれかけていて益田さんの手のひらを赤く染めていた。
「何…ですか?それ」
つぶれた実の汁があまりにも毒々しい色に見えて、自然と私は警戒した。
「桑だよ、く、わ」
「くわー?」
「そう、桑。お蚕さんが食べる葉っぱの桑」
「へえ……」
蚕って、あれだよね。白くてむくむくに太いの。
さなぎになるまで、ずっとずっと葉っぱを食べ続けてる…。
「ほら」
口元に何かがあたったのを感じ、ふと我に返った。
「喰ってみな」
紅をさすかのように、その赤い実でゆっくりと唇の形になぞられた。
「うまいぜ、これ」

昔、よくこれを喰ったんだ。食べ過ぎて腹を壊したこともあったけどさ。
子どものように無邪気な笑顔で、益田さんはそう促す。
眼を瞑ると、それまですぼめていた唇を開いてみせる。
きゅっと果肉の弾ける音と共に、あの人の指先を感じた。



FIN




今日の小噺はこれでお終い。

お祭り会場には、今回最後の投稿作品がUPされてます。
カンナさん、向日葵さん。
終盤を盛り上げて下さってありがとうございました!

さて仕事に行かなくては…と、思ったら、またゴミを出すのを忘れた!
今日は萌えない、もとい、燃えないゴミの日。
「もえ」を変換すると、うちのPCは一発で「萌え」になるんだよ。

じゃ、行くかね。




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おはようございます♪
2008/05/28(Wed) res
お話素敵です~♪
益田さんの魅力がいかんなく発揮されています・・・。
そんな風に益田さんから勧められてみたいです!
最後なんて、色っぽさを感じます・・・。
本当、素敵です♪

今回は何度も投稿させていただきまして、ありがとうございました!
あと僅かな期間ですが、全力で応援させていただきます♪
どうもありがとうございますw
2008/05/28(Wed) res
こんにちは、向日葵さん。
この時期になると、桑の実がなるんですよ。
よくざると脚立を持って、木によじ登って実を収穫します。そのまま食べても美味しいし、ジャムにしても。
本当は、ただ写真だけを使おうかと思っていたのですが、無理やり小噺を作った次第で。
どうもありがとうございます。

沢山おはなしを投稿して下さって有難うございました。
またこちらの方で紹介させて頂きますね~
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